うまコラ

競馬歴28年の筆者が綴る競馬コラム

オジュウチョウサンの挑戦

こんにちは、ゆ~じ~です。

 

障害競走では2年間、無敵の9連勝で障害G1を4連勝を誇る障害競走では「絶対王者」に君臨するオジュウチョウサン。

春に4勝目となる障害G1中山グランドジャンプを圧勝した後、有馬記念を目指すべく彼の新たな挑戦が始まりました。

 

父はステイゴールド、母父はシンボリクリスエスという血統を持つオジュウチョウサンですが、彼のデビューは今から5年前、2歳時の秋の東京芝1800mでした。

調教の動きにも目立ったもののなかった彼のデビュー戦は11着。

続く2戦目は芝2000m。

このレースでも8着と殆ど見せ場もないまま敗れたオジュウチョウサンは約1年の休養を経て復帰するのですが、そのレースは障害戦でした。

その時点で既に3歳の未勝利戦は終わっており、彼の選択肢は格上挑戦で500万下条件に挑むか障害戦に転向するか、引退するかという中で選ばれたのは障害レースでした。

 

今にして思えば驚かされるくらいですが、この初めての障害戦で彼は勝ち馬から13秒以上離された14着。

シンガリ負けでした。

 

しかし障害戦に対しての適性が十分にあるとの判断がなされた彼は引退することなく次戦に挑み、人気薄ながら2着と好走、彼の快進撃はここから始まったと言ってもいいかもしれません。

 

それから僅か2か月後には障害オープン戦を制し、その年の暮れにはJG1中山大障害へと出走するに至っています。

 

翌春、障害戦ではまだ若い馬に分類される5歳ながらJG1中山グランドジャンプで優勝、引退の危機を辛うじて逃れた1頭のステイゴールド産駒の伝説の幕が開けることになります。

 

前述したようにそこから無敵の9連勝、その強さを確実に増しながら。

 

障害競走では経験値がある方が有利に働くことも多く、本場の欧州などでも10歳を過ぎてなおトップクラスで活躍するケースも少なくないのですが、今春の時点で彼は7歳。

障害馬としてはむしろここからが充実期だろうというこの時期、事実今春の中山グランドジャンプでは後続に2.4秒もの大差をつけての大楽勝を見せています。

 

しかし、彼はここから新たな挑戦に向かうことになりました。

 

有馬記念

 

5年前、JRAの最下級条件ですら通用しなかった馬の再挑戦が始まります。

 

7月。

彼の姿は福島の500万下特別にありました。

障害では史上最強とも言われるほどの実績を重ねたオジュウチョウサンでしたが、障害競走と平地競走とではクラス分けの賞金は別に扱われるため、平地で未勝利馬である彼は500万下条件ではフルゲート以上の頭数では賞金順で除外されてしまうため、除外されないように選ばれたこのレースに向けて調整が続けられていました。

 

正直、馬券的には「典型的な美味しくない馬」だと思いました。

5年振りに走る平地競走、休み明け、平地競走での実績は皆無。

にも関わらず圧倒的なまでの知名度と人気。

馬券を買う際になるべく避けたい「過剰人気馬」ですが、彼は相当な過剰人気馬であると感じていました。

 

しかし、彼はその500万下特別を圧勝して見せました。

 

正直これには1競馬ファンとして相当驚きました。

平地である程度走れるメドが立っている馬ではないのですから。

いくら障害で桁違いの強さを示していても平地競走は全く異質なものですし、それも何年も走っていなかったわけですし。

 

これでオジュウチョウサンが有馬記念に出走出来る資格を得たことになりました。

有馬記念はフルゲートにならないこともありますし、何よりファン投票で上位に選ばれれば出走出来るわけです。

 

次に彼が競馬場に現れたのは11月の東京。

有馬記念へのステップレースとすべく1000万下特別、南武特別へと出走してきます。

 

私はここでもオジュウチョウサンの走りには期待していませんでした。

前走500万下特別を圧勝したとは言え、ローカルの500万下競走。

今回の1000万下特別クラスのレースともなると出走馬のレベルは格段に上がってきます。

ゆくゆくはオープン、重賞を見据えていきたい馬がゴロゴロいるクラスですから。

 

実際、私以外のファンの心理も似たようなものだったらしくオジュウチョウサンは2年振りに1番人気を譲ることになりました。

 

…が、彼はここをも制することになります。

 

 

有馬記念の人気投票では予想されていた通り、オジュウチョウサンは上位に推されており、選出は間違いないものと思われます。

 

恐らく彼が次に登場するのは暮れの中山、有馬記念の舞台となることでしょう。

 

もちろん、まだ勝ったわけでもなんでもないんですが、ここに歩みを進めることが出来るということ自体がどれほどの偉業なのかある程度の競馬ファンならば理解できるものと思います。

 

中央競馬で1勝するだけでも簡単なことではないこの世界で、まとも平地で走った経験もろくにない馬が7歳にして収得賞金0の段階から僅か数か月で日本競馬の最高峰である有馬記念へと向かえることになったのですから。

 

 

普通に考えれば、「まともに通用するわけがない」のですが、既に彼は幾度もの奇跡も起こしているんですよね。

 

彼は既に2歳時に未勝利戦ですら通用しなかった頃の彼ではありません。

 

では、改めてオジュウチョウサンの血統を見てみると、父ステイゴールドはオルフェーヴル、ドリームジャーニー、ゴールドシップを出しており、ある意味有馬記念では「最強」の父馬であるとも言えますね。

自身がそうだったようにタフで高齢になっても衰えを見せない産駒も多く、7歳以上でも重賞で活躍を見せるケースは少なくないですね。

加えて母父のシンボリクリスエスは有馬記念を2勝、特に2勝目の時には9馬身もの大差をつけて楽勝した名馬で、こちらも有馬記念には格好の血統の持ち主だったりします。

 

早くから有馬記念出走を見据えていただけあって、ここを最大目標としてこの1戦に向けて組まれたローテーションですし、案外有馬記念を狙うには好条件は揃ってたりもするんですよね。

 

まあ、普通に考えれば

 

 

「好走出来るはずがない」

 

 

んですが、そんなレースに夢を見て果敢に挑もうという心意気は間違いなく感じられますよね。

普通に障害レースに出走していればかなりの確率で数千万円稼げるだろうこの馬を「夢」を追うために平地への挑戦を試みたこと自体が物凄いことだと思いますし、それにここまで応えた馬もまた素晴らしいと思います。

 

もっとも、この挑戦には賛否両論あるだろうことは明らかです。

 

ただ、個人的にはその時を楽しみにしたいと思います。