スローペースは面白くない?
どうも、ゆ~じ~です。
今日触れるのは競馬に於いてのペースのお話。
ある程度、競馬をやっている人ならば何度かは聞いたことがあるであろう、
『スローペースばかりで面白くない』
と、いう話。
何故、こうした話題がでてくるのでしょうか?
ここに焦点を当ててみようかと思います。
まず、ペースというのは出走各馬の脚質や騎手などが考える作戦、競馬場のコース形態などによる影響を受けやすく、これらのファクターにより早くなったり、遅くなったりするものです。
まず馬の脚質についてですが、気性的に前に行きたがる馬とそうでない馬は確かに存在しますし、そうした気性をコントロールしやすい馬とそうでない馬がいます。
まあ、人間でもトンカツが好きな人とそうでもない人がいますし、食欲を抑えることの出来る人も抑えられない人もいます。
それと同じようなもんだと思えばいいでしょうか。
当然、前に行きたがる馬が複数いればお互いが前に行こうとしてしまうので競り合ってペースが上がりやすくなります。
逆にあまり前に出たくない馬が多くなればペースは落ち着きやすくなりますね。
短距離戦線で走る馬には前へ行こう行こうとする馬が比較的多く(そうしたコントロールがつきにくいからこそ、やむなく短距離を走っているというケースは少なくないですね)、ペースは速くなる傾向があります。
逆に長距離を走る馬というのはそうしたスピードのコントロールが出来る馬が多くなり、遅いペースになる傾向があります。
日本に於いては人気のある距離というのは比較的長い距離のレースが多くなってます。
ダービーにしても有馬記念にしても広い目線で見ると長距離戦に分類されてくるレースです。
昔の日本ではレースの距離体系が十分に確立されていませんでしたから、比較的長い距離のレースにもマイラーやスプリンターが出走することはそう珍しいことでもなかったのですが、そうしたスピードに長けた馬はペースを上げることも少なくなかったのですが、そうした馬が減ったことで中長距離戦のペースは昔より落ち着くことが多くなりましたね。
続いて競馬場の影響です。
例えば、ダートコースでのレースは一般に芝よりも前傾のラップが刻まれることが多くなっています。
その理由は大きくは2つ。
1つは単にダートでのレースの方が短い距離のレースが比較的多いこと。
実際、JRAで2000mを超える距離のダート重賞は1つもありませんね。
もう1つはコース形態の違いによるもので、日本では芝コースの内側にダートコースが作られています。
当然ながら内側にあるダートコースは芝コースと比べると直線が短く、コーナーもきついものとなります。
そうしたコースでは外を回るデメリットが非常に大きくなりますし、直線も短いので後ろからは届きにくくなってきます。
結果、出走馬の多くはイン寄りの距離ロスの少ない位置を通りたがります。
そうなってくると自然と前へ行って内側のコースを通ろうとする馬が多くなり、先行争いが激しくなりやすくなり、ペースが速くなることが多くなります。
芝コースはその逆となります。
加えて昔より直線が長くなっているコースも少なくなく、前に位置するメリットはそれほど大きくなくなりますからダートより後傾のラップとなりやすくなってきます。
こちらも日本で人気のあるレースは概ね芝のレースですからスローペースが目につくようになりますね。
因みに国によってこの面は大幅に違いを見せます。
アメリカなど北米は比較的コーナーの半径が短い競馬場が多く、ここで活躍するためにはまず「スピード」が求められます。
激しい先行争いを演じてなお、最後まで持ち応えた馬が勝つ、そういったレースが多くなり、前傾ラップのレースが多くなっています。
結果、高いスピード能力、パワーのある馬やスピードの持続力に長けた馬が多くなる傾向があります。
逆にヨーロッパの競馬場は直線は長く、コーナーは緩くなっていることが多く、さらにコース内の傾斜が大きく、深い芝でパワーが求められることが特色です。
特にイギリスやアイルランドにその特色が強く見られます。
ですから、スピードを上手くセーブしてスタミナを浪費しないことが求められます。
結果、各馬は無理にペースを上げず、最後まで余力を残すことが重要になるためにペースは遅くなることが多くなります。
求められる資質は豊かなパワーと持久力、スピードをコントロール出来る操作性となります。
日本の競馬場、ダートは北米寄りですが芝コースに於いてはその双方の特色を併せ持ったコースとなっていますね。
これらの要素によってペースは左右されますから、芝コースでは昔より遅いペースになりやすいのは当然の成り行きとも言えそうです。
ただ、北米ともヨーロッパとも違うのが馬場の軽さですね。
芝コースでは馬場管理技術が大幅に向上し、平滑でスピードが出しやすい馬場になってきています。
昔のレースより早いタイムが出やすくなっているのは競走馬の能力向上と共に馬場のスピードの出しやすさに起因しています。
昔と比べて芝の長さを短くしているとか馬場が固くなっていると思っている方も少なくないようなのですが、実際にはそうではなく、
『馬場が痛みにくくなったこと』
『平滑になったことで馬が走りやすくなったこと』
が大きかったりします。
昔とデータを比較してみるとわかることなのですが、実は芝馬場で走った馬の故障率は下がっています。
デコボコしてないところを走っているんですから脚を取られることも少なくなり、スピードも出るし、故障も減る。
JRAはこのような「日本の馬場」を作り上げていると、言っていいでしょう。
今、JRAは北米や欧州のような馬場を模倣しようという気はあまりないんじゃないかと思います。
人によってはこれを諸外国と比較してガラパゴス化だと言って嫌っている人も多いようですが…。
これらの要因が絡み合い、その結果として昔と比較してスローペースが多くなったことは事実でしょうね。
加えて瞬発力に非常に優れたサンデーサイレンスの登場でさらにトップスピードと瞬発力の重要性が増しました。
芝のレースで上がり3ハロンのタイムが30年前なら34秒台なんて出そうものなら話題になるほどでしたが、今や32秒台が出ることも普通で、時に2歳馬ですら32秒台の上がりを繰り出してきたりします。
遅いペースになりやすいのは相応の理由があって、単に昔より騎手が消極的になったとかそういうことではないワケです。
彼等騎手達はいかにして勝つかを考えてるだけなんですよね。
しかし、こうしてスローペース化が進んだことに対して一概に「面白くない」のでしょうか?
求められる適性は確かに変わりつつあります。
しかし、速い流れには速い流れの、遅い流れには遅い流れの魅力があるかと思います。
遅いなら遅いでいかにそのレースに適した走りを見せられるのか、どういった駆け引きが行われているのか、そうした観点で見ていると、
「スローペースは面白くない」
ことはないと思うんですよね。
だって、それってアメリカ競馬を見慣れている人がヨーロッパの競馬はつまらないとか、ヨーロッパ競馬を見慣れている人がアメリカ競馬は面白くないとか言っているのと同じじゃないかな~と、つい思っちゃうんですよ。
アメリカにはアメリカの、ヨーロッパにはヨーロッパの、日本には日本の競馬の面白さ、楽しさは確実に存在します。
そして、時代の流れと共にその価値観も移り変わっていくものだと思います。
あるのはそれだけじゃないかなぁ、と。