種牡馬 ハーツクライ
今回は日本国内にて唯一ディープインパクトに土をつけ、種牡馬としても数々の実績馬を送り出して日本を代表する名種牡馬として活躍し続けているハーツクライについて触れていきます。
父は日本競馬史上最高の種牡馬であるサンデーサイレンス(その父ヘイロー)。母は天皇賞で牡馬を相手に人気になる程の実力馬アイリッシュダンス(その父トニービン)という2000年代前半の社台グループを象徴するような良血馬。
3歳1月と遅めのデビューながらも若葉ステークスを制して僅か3戦でオープン入り。
京都新聞杯で強烈な末脚を繰り出して重賞初制覇を収めると、続く日本ダービーでは最後方に近い位置から猛然と追い込むもキングカメハメハには届かず2着に。
その後は1年近くは不完全燃焼感の残るレースを続けていたものの、4歳時の宝塚記念では2着となり、3歳春の素質溢れる走りが蘇りつつあることを示唆。
秋のジャパンカップでは豪快に追い込んでアルカセットに僅かハナ差に迫る2着に入ると、続く有馬記念ではこれまで追い込み一手だったハーツクライはルメールを背に果敢に先行策に打って出て、圧倒的人気でここまで無敗の三冠馬ディープインパクトを相手の追撃を抑えて優勝。
その後、遠征したドバイシーマクラシックでは後続につけいる隙すら見せることなく4馬身もの差をつけて楽勝し、G1連勝を飾っています。
更に夏にはイギリスへと遠征してかの地の最高峰、キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークスへと出走。ハリケーンラン、エレクトロキューショニストと激戦を繰り広げての3着。
日本に帰国後に出走したジャパンカップではディープインパクトの前に全く為すすべなく10着。
このレース後に喉鳴りを発症していたことが明かされて引退し、種牡馬入り。
同じ父を持つディープインパクトと同じタイミングでの種牡馬入りとなったことでやや不利な状況でもあったハーツクライでしたが、産駒達がデビューを迎えると芝中長距離を主な活躍の舞台に徐々に頭角を現し、次々に活躍馬を送り出し、今では日本を代表する中長距離種牡馬としての地位を確立しています。
その産駒の中でもジャスタウェイはドバイターフを歴史的な楽勝劇を収めてこの年の世界ランキング1位を獲得、他にもスワーヴリチャード、シュヴァルグラン、ヌーヴォレコルト、リスグラシュー、ワンアンドオンリー、アドマイヤラクティなど国内外で活躍する産駒を多数送り出しています。
産駒は4歳以降に本格化を見せたハーツクライ自身と同様に成長力に富んでいることが多く、上記の代表産駒達も3歳秋以降にキャリアを代表するような活躍を見せている馬が多くなっています。
では、ここからは産駒の傾向について見ていきましょう。
ハーツクライ産駒ー距離適性・芝
流石はハーツクライ、芝のレースでは全般に優秀な複勝率を残しています。
また、意外と短い距離をこなせないわけではないことが見て取れます。
が、やはり1700mを超える距離の方が成績は良い傾向があり、一般に言われているように長い距離を得意としていることがデータの面からも示されています。
母がトニービン×リファールという欧州型スタミナ血統ということもあり、サンデーサイレンス系種牡馬としてはかなり持久力に寄ったタイプであるという認識で良いかと思いますね。
ただ、前述したように短い距離が全く走れないわけではないので短距離だからと軽視し過ぎない方が良いようです。
では、ダートについても見ていきましょう。
ハーツクライ産駒ー距離適性・ダート
やはり芝のレースと比較するとダートでは複勝率は低めになっています。
距離的には芝のレースと似たようなもので、短距離が走れないわけではないもののマイルを超える距離のレースの方が成績は良い傾向が出ています。
また、このデータでは見て取ることは出来ないのですが、ハーツクライの産駒でダートの重賞を制している馬は殆どいないように上級条件に於いてはダートでは殆どと言って良い程活躍出来ていません。
やはり、芝でこその種牡馬だと見て良いかと思いますね。
ダートでは下級条件なら…と、いった印象です。
続いては重馬場になった時にどうなのか見ていくことにしましょう。
ハーツクライ産駒ー馬場状態別成績・芝
稍重馬場では良馬場時を上回る成績を残しています。
が、一方で重馬場まで悪化した際にはその数字が落ちており、判断は難しいところなのですが、少なくとも多少渋ったくらいでは苦にしないようです。
ただ、その反面でスタミナ系種牡馬であるため、渋った馬場を得意にしているイメージが強いのか、馬場が悪化した時にはやや人気になっており回収率自体はそれほど良い数字を残してはいないようです。
ではダートについても見ていきましょう。
ハーツクライ産駒ー馬場状態別成績・ダート
ダートでは良馬場時よりも稍重、重馬場時の方が優れた複勝率を残しています。
本質的には芝向きの産駒が多い種牡馬だけにパワーを要する馬場よりは脚抜きが良くなる馬場の方が好成績を残しやすいのかもしれないですね。
下級条件のダート戦に出走している馬の中には脚部不安などのためにダートに出走しているケースも少なくはないこともこうした傾向を生み出しているのかもしれませんね。
ハーツクライ産駒ー得意コース
ここでは出走回数100回以上というフィルタリングを掛けています。
ハーツクライらしく芝2000m以上の条件に好成績が集まっていることがデータの面からもはっきりしています。
上位9位までのコースは全て芝2000m以上のコースとなっています。
そうした意味では非常にわかりやすい傾向を持っていますね。
意外なところでは函館ダート1700m。
出走回数で89回のため、表からは弾かれていますが複勝率は36.0%とかなりの高数値を残していて複勝回収率も100%を超えています。
ハーツクライ産駒ー母の父別成績
ここでは出走回数80回以上というフィルタリングを掛けているのですが、ご覧の通り、上位にはアメリカンな血統を持つ種牡馬の名がズラリと並んでいます。
サンダーガルチ、シーキングザゴールド、ジェイドロバリー、アンブライドルズソングと4頭がミスタープロスペクター系種牡馬となっています。
カポーティもアメリカでダート短距離でスピードを生かした活躍を見せた種牡馬ですね。
因みに6位はエルコンドルパサー、7位がキングカメハメハと更にミスプロ系種牡馬の名が続いており、ここまでが35%を超える複勝率となっており、ダートでスピードを生かす種牡馬、特にミスタープロスペクター系との相性が良いことが見て取れます。
代表産駒達の名を見てもシュヴァルグラン、スワーヴリチャード、リスグラシュー、ヌーヴォレコルト、ワンアンドオンリーらは母系にミスタープロスペクターの血を持っていますね。
こうした種牡馬との組み合わせで活躍しているわけですが、それでも芝中長距離で活躍する傾向を残しているわけですからハーツクライの芝適性、長距離適性は非常に高いと見て良いでしょう。