うまコラ

競馬歴28年の筆者が綴る競馬コラム

2019年新種牡馬を振り返ってみる

2019年に初年度産駒がデビューした昨年の新種牡馬達。

産駒がJRAデビューを果たしてから間もなく1年を迎えようとしています。

 

新たな世代のデビューを前にこの1年の成績を振り返ってみようと思います。

尚、データは2020年5月10日までのものとなっています。

 

キズナ

収得賞金 10億4941万円

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この世代だけの収得賞金だけで既に10億円を突破しており、全種牡馬の中で見てみても父であるディープインパクトに次ぐ2位と素晴らしい成績を残しており、G1勝ちこそないものの重賞勝ち馬を次々に出してきています。

チューリップ賞を制したマルターズディオサ、京都新聞杯のディープボンド、京成杯のクリスタルブラック、フラワーカップのアブレイズ、函館2歳ステークスのビアンフェがJRA重賞を制しており、地方でもキメラヴェリテが北海道2歳優駿を制しています。

量だけでなく質も高く、この活躍でディープインパクト後継種牡馬としての立ち位置はトップに立ったと言って良いでしょう。

産駒の平均出走距離は1684mとなっており、現時点に於いては中距離指向が見て取れます。父よりもダートでの適性も高く、全種牡馬中でも5位で新種牡馬中ではトップとなっています。

ディープインパクト産駒ではありますが母父はストームキャットでもあり、半兄にアメリカで活躍したサンデーブレイクを持っているように一定以上のパワーも持ち合わせているようです。また、自身がニエル賞を勝ち、凱旋門賞でも4着に好走しているようにタフな馬場に対しての適性も感じられ、馬場に関しては父親以上のオールマイティーさを持ち合わせていると見て良いかと思われます。

 

エピファネイア

収得賞金 7億7032万円

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収得賞金7億7032万円を記録、全種牡馬中に於いてもディープインパクトキズナに続く3位と素晴らしい活躍を見せています。

ここまでの産駒で重賞勝ちを収めたのは1頭だけなのですが、その1頭が無敗で桜花賞を制したデアリングタクト。

重賞勝ちには至らずともシーズンズギフト、スカイグルーヴ、ロールオブサンダーなど重賞戦線で活躍する馬は何頭も出ており、デアリングタクト1頭だけの活躍ではないことがわかります。

産駒の平均出走距離は1678mとキズナとほぼ同じくらい。こちらも中距離向きの指向が出ています。

現役時代に非常にパワーがあることでも知られ、ドバイワールドカップへ出走したくらいだった同馬ですが、産駒達は殆ど芝で活躍しておりここまでの全47勝の内、ダートでの勝利は6勝に留まっています。

シンボリクリスエスの産駒だけにもう少しダートでも走れても良さそうにも思われますが、母系の血が強く出やすいのでしょうか。

自身、菊花賞を楽勝したようにスタミナ自体はしっかり持ち合わせていただけに今後、折り合いのつく産駒の中からは長い距離へ対応してくるものも出てくるように思います。

 

リアルインパクト

収得賞金 3億9144万円

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収得賞金3億9144万円は新種牡馬では3位、全種牡馬の中では13位となります。

キズナエピファネイアにはやや差があるのですが、自身の競走成績からすれば健闘とも言える成績を残しています。

何と言っても大きかったのはNHKマイルカップでのラウダシオンの勝利。ラウダシオン1頭で1億7000万円以上を稼ぎ出しています。

他にはアルムブラストがオープンのカンナステークスを制しています。

それでも既に産駒達は計22勝を挙げており、当初の期待を上回ると言っても良い成績を収めています。

産駒の平均出走距離は1518m。これはダイワメジャーと同じくらいとなり、当初のイメージ通り短距離~マイルあたりで活躍する馬が多くなっています。

全22勝の内、18勝までもが芝でのものでダートでは今のところそれほど走っていないというのが実状です。

自身が3歳にして安田記念を制したように仕上がりの早さも目につき、2歳戦では次々に勝ち馬を出していました。

健闘はしていますが、この成績で大人気になる…にはやや足りない印象があるのも事実。生き残るためには更なる活躍馬の登場が求められます。

 

ゴールドシップ

収得賞金 3億1075万円

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産駒の収得賞金3億1075万円は上記3頭に続く4位。全種牡馬中では17位となります。

重賞では札幌2歳ステークスでブラックホールが勝利を収めています。

その札幌2歳ステークスではサトノゴールドも2着し、早期の重賞ワンツーフィニッシュは大きなインパクトを与えています。

また、ウインマイティーがオープンの忘れな草賞を制しています。

産駒の平均出走距離は1801m。この数字は長距離での強さに定評のあるハーツクライオルフェーヴルをも上回っており、産駒達にも豊かなスタミナ能力が受け継がれていることが示唆されています。

21勝を挙げていますが、その内17勝を芝で挙げておりダートでの収得賞金は4000万円にも満たない状況であり、芝への高い適性を持つことがわかります。

今後、産駒は長い距離のレースに出走する機会も増えてくると思われるだけに成績をジリジリ伸ばしてくることも考えられます。

 

マジェスティックウォリアー

収得賞金 2億1951万円

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3歳世代の産駒の収得賞金は新種牡馬の中では5位につけており、全種牡馬中では24位となっています。

現3歳世代に於いては目立つ活躍を見せている産駒はいないのですが、輸入された産駒からは既に南部杯を制しているベストウォーリア東海ステークスを制したエアアルマスが出ています。

既に産駒が一定数いる状態で輸入された馬だけにある程度やれるだけの裏付けを持ってはいるのですが、今のところは条件戦での活躍に留まっています。

産駒の平均出走距離は1571m。マイルから中距離に掛けての出走が多くなっており、これはベストウォーリアやエアアルマスのイメージとも概ね一致します。

当初の予想通りダートでの活躍が多くなっており、ダートでは全22勝中18勝を挙げています。ダートに於いては全種牡馬中でも7位に入る健闘を見せています。

今後はダート戦線でも比較的賞金の高いレースに出走する機会も増えてきますし、ジワジワとダート戦線に於いてその地位を築くことになりそうです。

イメージ的にはパイロを中距離寄りにシフトさせたような感じでしょうか。

 

 

ここでは上位5頭について紹介させていただきました。

ある程度、活躍している種牡馬が活躍を見せられるのは概ね10年程度。

言い換えると上位5頭の種牡馬達は上位50位以内の候補とも言えます。

しかし、長期に渡って活躍していくためには種牡馬ランキングで言えば上位20~30頭くらいまでがいいところです。

ここに名の上がらなかった種牡馬達はそう遠くない内に淘汰されていく可能性は低くはないでしょう。

この上位5頭についても当面安泰なのはキズナエピファネイアだけでしょう。

種牡馬と言うものはもう少し長い目で見るべきなのでしょうが、今の生産界ではそれを悠長に待っていることは出来ないのも事実。

厳しい世界ではありますが、成功すれば多くの産駒を後世に残していけるワケです。