2020年 オークス回顧
注目は無敗で桜花賞を制したデアリングタクトの走りでしたが、終わってみればそのデアリングタクトがゴール前で粘るウインマリリンら先行勢をきっちり捉えて優勝。
牝馬クラシックを4戦無敗で完全制覇。
尚、牝馬クラシックを無敗で完全制覇したのは何と1957年のミスオンワード以来となる63年振りの快挙となりました。
では、このレースを振り返ってみましょう。
オークス 総括
東京芝2400mはホームストレッチからのスタートで例年なら観客の声援や動きに気を取られる馬も出てきますが、幸か不幸か今年は無観客。
ゲート入りも激しく嫌がる馬もなく、無事にスタート。
リリーピュアハートが躓いてダッシュがつかずに後方から。そんな中、戦前の予想通り桜花賞で超ハイペースを演出したスマイルカナが先手を取って1コーナーへと馬群を引き連れていく。
外から押していったウインマリリンが2番手を確保し、内枠のクラヴァシュドール、アブレイズもこれに続いて追走していく序盤。
人気のデアリングタクトは良いスタートながら無理に前に行かせようとせず、1コーナーで馬群が内に寄ってきたところで接触などもあって後方に控える形に。
また、デゼルは内へと押し込められ、後方からの競馬に。
スマイルカナに競り掛ける馬はなく、バックストレッチに向く頃には後続を3馬身程離しての単騎逃げの形に。
馬群はスマイルカナだけが1頭先頭で悠々走るも後続は一団となっての追走で、1000mの通過タイムは59.8。
桜花賞時とは違い、スマイルカナは徐々にスピードを緩めながらそのまま単騎逃げの形を保ち、後続の馬達は僅かにその差を詰めるも、競り掛けないまま馬群は3コーナーへ。
各馬一団になった状態で馬群は4コーナーから直線へと向かう。
各馬のペースが上がり、ごちゃつく中でウインマリリンは最内へと進路を取り、クラヴァシュドールはウインマリリンの外に。デアリングタクトは後方からスパート態勢に。
直線では各馬が内外へと広がってのスパート対決の様相に。
早めに先頭へと立ったのはウインマイティー。
内からウインマリリンが脚を伸ばして馬群からやや抜け出して内からウインマイティーに並び掛ける。
一方、デアリングタクトは前が壁になり、進路を失うも坂を登り切ったあたりで馬群を割って脚を伸ばしてくる。
ラスト100m、やや抜け出したウインマイティーとウインマリリンの一騎打ち状態になるもゴールを前にしてデアリングタクトの伸びが際立ち、一気にこの両馬を差し切ってゴール。
最後にウインマリリンがウインマイティーを競り落として2着を確保、ウインマイティーは3着。これに鋭い脚を見せたリアアメリア、マジックキャッスルが続いてゴール。
では、いつものように200m毎のラップを見てみましょう。
12.3-11.1-12.0-12.3-12.1-12.7(前半1200m72.5)
13.0-12.6-12.1-11.2-11.2-11.8(後半1200m71.9)
一見すると前後半のラップ差が少ない平均ペースにも見えなくもないですが、ラスト3ハロンで急激に早くなっているようにスローペースと言って良いかと思います。
序盤のスマイルカナの逃げはそれほど遅くはなかったのですが、レースの中盤、1000mを過ぎたあたりで大きくペースダウンしているのも関わらず、誰も競り掛けていかず、各馬とも直線へ向くあたりまで脚を溜めたまんまとなりました。
殆どの馬が余力十分で直線に向き、瞬発力を爆発させる展開となりました。
結果、内でロスなく脚を溜めながら先行出来たウインマリリンと他馬が邪魔にならず早めにスパート出来たウインマイティーが上手く粘りを見せ、強引に馬群を抜けてきたデアリングタクトを負けすかというところまで善戦しています。
では、ここから上位各馬の寸評へ行きましょう。
オークス 上位各馬寸評
1着 デアリングタクト
結果から言えば能力的に一枚抜けていました。好スタートを切るも序盤で接触などもあり、無理せず控える選択をした松山騎手。細かな位置取りよりも馬を動かしやすい位置へと導いた結果、中団やや後方寄りの位置取りに。4コーナーで外目から進出するも直線では他馬が横一線になって進路を失う状況。外にも出せず、隙間が出来るのを待って馬群を割って伸びてきました。最後の1ハロンでは他馬の脚にやや陰りが見えたところでその差を一気に詰めて差し切り。
着差以上の強さを示したと言って良いかと思います。
ただ、一瞬の斬れを爆発させたというよりは馬群を割ってからの約300mを全く失速しないまま走り切った印象。
本来、こうした瞬発力勝負は適した流れではないように思いますが、それでも勝ち切ったのは馬の絶対能力の高さであったと見ます。
2着 ウインマリリン
鞍上を務めた横山典弘騎手が実に上手く持ち味を生かして騎乗した印象です。
容易に前が止まらない馬場も見越して序盤で負荷を掛けてでも2番手を取りに行き、4コーナーで各馬が一斉に動きを見せるところで最内へと潜り込ませながら一瞬脚を溜めていました。ここでスパートしていたなら粘るウインマイティーは捉えられなかったかもしれませんね。馬の実力もさながら今回は鞍上の好騎乗が光った印象です。
3着 ウインマイティー
序盤は7番手付近を追走しているのですが、わずかずつその位置取りを上げ、最終コーナーでやや早めに仕掛けて前に出せたことが大きかったようです。早めに前に出せたことで込み合う位置に巻き込まれずに少ないコースロスで進めることが出来ました。
ゴールドシップ産駒らしい持久力を生かしたロングスパートでゴール前まで粘りを見せています。その一方で中距離の瞬発力勝負では厳しいように思われます。中距離ならば平均以上のペースでの消耗戦で浮上してくるタイプになるのではないかと見ています。
4着 リアアメリア
道中は勝ち馬と同じような後方寄りの位置取りでしたが、ここから突っ込んできたのは馬の能力と瞬発力の高さに他ならないと見ます。近走は不甲斐ない走りが続いていましたが、やはり能力は高かったと見ています。上手く走ったと言うよりは本来持っていた強さでここまで持ってきた、というべきかと思います。
5着 マジックキャッスル
ディープインパクト産駒らしい強烈な瞬発力で後方から脚を伸ばしてきました。
母系にスタミナを感じさせる血も持っており、浜中騎手がこの馬の持ち味を生かした末脚勝負に出た…のですが、流石にちょっと足りませんでした。
正直言って2着以下は展開一つでどうにでも変わる…といった印象。
仮に来週のダービーに出走していたら掲示板も期待できる…レベルの力量を感じたのは勝ったデアリングタクトだけでした。
現時点に於いて3歳牝馬路線ではデアリングタクトとレシステンシアの能力が一枚抜けているのだろう、と。
秋華賞までの間にこの力関係が大きく変化する可能性は高いものと思えます。
デアリングタクトの走りに「第2のアーモンドアイ」をイメージされた方も少なからずおられるとは思いますが、個人的にはタイプは異なるように思えます。
アーモンドアイというよりはナリタブライアンみたいなイメージでしょうか。