2020年 日本ダービー回顧
無事、ダービーが終わりました。
無観客と言う異例のダービーを先頭で駆け抜けたのは単勝1.4倍という圧倒的な1番人気に推されたコントレイルでした。
これでコントレイルは5戦5勝、G1は早くも3勝目。
父のディープインパクト以来、15年振りとなる無敗の2冠馬に輝きました。
ダービー時点でG1を3勝したのは94年のナリタブライアン以来となりますね。
圧巻の強さを見せたコントレイル、偉大なる父ディープインパクトの最高傑作として今後どのような走りを見せてくれるのでしょうか。
では、そのダービーを振り返ってみましょう。
東京優駿(日本ダービー)総括
無観客開催ということもあり、ホームストレッチ前の発走も激しくイレ込む様子を見せる馬はなく、各馬ともスムーズな枠入れ。
スタートは各馬ほぼ揃って大きく出遅れた馬はなし。
大外枠のウインカーネリアンが気合いを入れて積極的にハナを取りに行く姿勢。
人気のコントレイルも皐月賞時とは違い、ダッシュをつけて前に出していく形に。
サリオスは外目の枠ということもあり、中団から進める態勢。
1コーナーを迎える時点で先頭はウインカーネリアン。コルテジアがこれに続き、コントレイルは内の3番手につける。
馬群のほぼ真ん中程の位置にサリオス、その少し前にワーケア。
サトノフラッグは後方寄り、13、4番手を追走。
馬群は大きく広がることなく18頭が比較的密集した状態でバックストレッチへ。
ここで後方につけていたマイラプソディと横山典弘がスローを見越して馬群の外から一気に捲って先頭へと取り付く。
前半1000mの通過タイムは1:01.7。
先頭に立ったマイラプソディはペースを落とし、詰まり気味の馬群は更に凝縮しながら3コーナーへと向かう。
この時点でコントレイルは内目の5番手、サリオスは10番手付近を追走。
ここでもそれほどペースは大きく上がることがなく、各馬とも直線に向けて脚を溜めつつ上位を伺う姿勢。
直線へと向き、コントレイルはその位置をやや外に出し、進路を確保。
サリオスは大外へと持ち出し、追撃態勢に入る。
コントレイルがジリジリと先頭との差を詰めながら坂を駆け上がり、それを外からサリオスが追う。
残り200m余りとなったところで先頭を捉える位置に浮上したコントレイルが一気に加速。サリオスも脚を伸ばしてくるもコントレイルには離されていくばかり。
加速のついたコントレイルは最後までその勢いを失うことなくサリオスに3馬身差をつけて楽勝。
外から必死の脚を見せたサリオスだったが、他馬には完勝したもののコントレイルの前には為すすべはありませんでした。
3着にはしぶとい脚で食い下がったヴェルトライゼンデ、4着に後方寄りの位置から伸びてきたサトノインプレッサが入り、前目の位置で粘ったディープボンドが5着。
では、いつものように200m毎のラップタイムを。
12.6-11.3-12.9-12.6-12.3-11.8(前半1200m73.5)
12.2-12.3-11.8-11.3-11.3-11.7(後半1200m70.6)
見ての通りのスローペース。戦前に予想された通りの流れとなりました。
各騎手ともそれを承知していたように馬群は密集。途中で瞬発力勝負に出ては厳しいと、横山典弘騎手がマイラプソディを大きく外に持ち出してスパート、一気に先団に取り付いていますが、先頭に立ったところでしっかりペースダウンしたことでレースのペースは上がらないまま進んでいきました。
残り200mからはコントレイルの独走で11.7のラップが記録されていますが、他馬はこれより大きくタイムを落としています。
参考になるのは8Rの2勝クラス青嵐賞。このレースの勝ち時計が2:24.6。
道中のラップも比較的近いものだったのですが、この勝ちタイムとサリオスのタイムが同じですね。
先週までの芝と比較するとやや時計を要する馬場だったのは確かですが、タイム自体はそれほど際立ったものではない印象です。
最終レースの目黒記念の勝ちタイムは2:29.6。
ペースは違いますが2400mの通過タイムは2:24を切っており、ここからもこのレース全体のタイムはそれほど高い水準ではなかったことが窺えます。
ただ、勝ったコントレイルは別にして他馬にとっては数字のイメージほど遅い流れでもなかったかと思います。
では上位各馬について個別に触れていきましょう。
東京優駿(日本ダービー)上位各馬寸評
1着 コントレイル
スタート直後に素早く先頭を見るような位置を確保し、後は折り合いをつけて慎重に進路を選んでいきました。コーナーで徐々に外に出して馬場の中程に持ち出し、満を持して追い出し。福永騎手が行ったのは正に王者が勝ち切るための騎乗でした。
横山騎手が道中で捲りを打ってくることも想定に入れており、一切慌てることなく折り合いに専念しながら追走しています。
直線では追い出してもジリジリと伸びており、個人的にも一瞬、「あれ?そんなに伸びない?やばくね?」と思ったのですが、福永騎手曰く「遊んでいた」とのことで激しく追われるや瞬く間に後続を置き去りに。やはりこのメンバーの中では能力は抜きんでていたと見るべきでしょう。
強かったのは確かですが、正直言うと父のディープインパクトの領域にはまだ達してはいないようにも見えます。
もっともまだ全能力を出し切っていない印象もありますし、馴致が遅れていた馬だけにまだ更なる成長の余地は持っているかもしれないですね。
あくまで現時点で…というなら皐月賞時に名を挙げたドゥラメンテと同等クラスの力量の持ち主かと見ます。
2着 サリオス
外目の枠ということもあり、道中は焦らずじっくり後方寄りで待機。直線では外に持ち出して追撃、と展開に左右されることなく自分の競馬に徹して真っ向勝負を挑んだ形。
結果としてそれでも尚、一瞬にして突き放されてしまいましたが3着以下の馬達には完勝しており、流石と言える強さは見せたといって良いでしょう。
ただ、皐月賞時に見せたパフォーマンスと比較するとやや劣る印象を受けます。
2400mはやはりベストではなかったようにも思えます。
瞬発力においては超一流には及ばないもののスピードの持続性は十分にあると見ます。
宝塚記念でその走りを見てみたいと思わせる1頭です。
3着 ヴェルトライゼンデ
道中は勝ったコントレイルを前に見るような位置から早めに外に持ち出して進出。直線ではフラフラしながらもゴール手前までジリジリと伸びを見せていました。最後は止まってしまっていますが、何とか3着で入線しています。
本質的に東京コースはそれほど向いてはいない印象で、むしろ菊花賞の方が妙味がありそうな血統と走りで、距離的には更に距離が伸びて良さが出そうな印象を受けます。
多少時計が掛かる馬場の方がベターかと思います。
4着 サトノインプレッサ
後方寄りの位置でじっくり脚を溜めての末脚勝負で馬群の中から伸びてきました。
前走の大敗もあり、人気はありませんでしたが、NHKマイルカップはまともに競馬をしておらず、その前の毎日杯は鋭い脚で差し切っており、そもそもがこのくらいはやれるだけの能力は持っていたのだろうと思います。
現時点ではまだ未完成感はありますが、ゆくゆくは芝中距離路線で活躍できる素質は持っていると見ます。
坂井騎手は良い騎乗だったかと思います。
5着 ディープボンド
京都新聞杯を制しながらも人気薄だった同馬ですが、前目で競馬を進めてしぶとく粘り込んでいます。それほど斬れる脚はないだけにこの馬自身は現時点でほぼ及第点と言える走りは見せていると見ます。
活躍を見せるキズナ産駒達ですが、どうもディープインパクトとはちょっと違ったタイプのようですね。斬れはそれほどでもないですが、パワーは父以上ですね。
キズナ自身がニエル賞を勝つなどしているようにややヨーロピアンなタイプのようです。
ディープボンドにしても母父のキングヘイローや母母父のカコイーシーズの血も影響してかそうしたタイプのようです。
やはりコントレイルの強さは半端ではありませんでした。
まだディープインパクトには及ばない、とは記していましたが、この10年間のダービーに対象を絞ればオルフェーヴルに次ぐ評価です。
だいたいドゥラメンテと同水準と見ています。
ただ、その一方で他馬の能力についてはやや疑問符がついたのも確かです。
2着のサリオスはともかく4着以下の馬達については更なる成長なくしては今後の古馬重賞戦線で戦うにはまだ足りないように思います。
ヴェルトライゼンデは血統の印象通りですがステイヤーかもしれませんね。