うまコラ

競馬歴28年の筆者が綴る競馬コラム

2021年 中山金杯予想

皆さま、あけましておめでとうございます。

紆余曲折ありながらも何とか無事に年を越すことが出来ました。

本年もお付き合いの程、宜しくお願いいたします。

 

と、挨拶はこのくらいにして新年は中山金杯からです。

尚、京都金杯京都競馬場が改修中のため、中京競馬場で行われます。

紛らわしいですが、お間違えの無いように。

随分昔には『中山金杯』『京都金杯』でなく『金杯(東)』『金杯(西)』といった具合だったんですが、今年の場合はかえって紛らわしくなってしまいましたね。

 

で、中山金杯ですが、昨年末の開催を見る限りは芝コースはだいぶ馬場が荒れて時計が掛かる状態が続いています。

JRAより発表されている馬場硬度についても全体にやや硬めとなっていましたね。

尚、一般に言われているイメージとは少し違うのですが、いわゆる高速馬場の場合は馬場はそれほど硬くないことが多かったりします。

今の日本の高速馬場というのは平坦度が高く走りやすい状態から作られているため、そうした馬場状態の際にはむしろ柔らかめの馬場になるよう調整される傾向があるようですね。

今はその逆で、馬場が痛んで凸凹が発生、芝もハゲている個所が目に付く状態でした。

無論、時計は出にくい状態のなのですが、こうした馬場で水を撒くなどして柔らかくしてしまうとかえって脚を取られる危険性が増すとの判断からか、あまり柔らかくしないようにしていると感じられます。

昨年の最終開催時は有馬記念で勝ち時計が2:35.0と近年でもかなり遅めの時計。

1200mで行われた最終レースの2勝クラスは勝ち時計がようやく1:10を切る程でまるで2歳未勝利戦のような時計になるほどでした。

それが10日足らずでいきなり回復するはずもなく。

ましてや寒冷な日が続いていましたから、芝の生育は期待できない状態でした。

当然ながら馬場は例年以上に力を要する状態となっていることでしょう。

そのあたりを加味しながら予想していきましょう。

 

f:id:yuujiikeiba:20210104111337p:plain

◎ ヴァンケドミンゴ

ルーラーシップ産駒らしく昨年春から力をつけてきた同馬。福島競馬場を得意にしている馬で中山変わりは決してプラスではないのと見ていますが、前走僅かに敗れたバイオスパークとの比較では斤量で1キロの差がついたことで十分に逆転可能と見ています。

血統的にはアグネスタキオン×ウメノファイバーの血を持つ母アンフィルージュにルーラーシップを配合。90年代の日本的な血統に欧州色が強くパワーのあるルーラーシップとの血統は今の力を要する馬場で斬れを必要とされない今の中山芝コースへの適性は低くはないものと見ます。

 

○ ディープボンド

こちらはキズナ×キングヘイローの配合。キズナディープインパクト産駒ですが、父のような斬れはそれほどないもののスピードの持続力とパワーに優れています。キングヘイローダンシングブレーヴ産駒らしいパワーに優れており、この馬自身の成績を見てもわかるように斬れはないもののバテずにしぶとい脚を使えるのが特徴。

2000mはやや短いようにも感じますが、今のタフな馬場ならば。

 

▲ テリトーリアル

昨年の3着馬。血統の話をするなら正にザ・欧州血統の同馬。父はガリレオ産駒のテオフィロ、母系にもストリートクライ、ダルシャーン、ブラッシンググルームと欧州で結果を残してきた名種牡馬の名が並びます。昨年全くの人気薄で3着しているように今の力を要する馬場への適性は高いものと思われます。7歳になりましたが、能力的には今が生涯ピークに来ているように感じられます。前走は9着でしたが、これは斬れ負けであって着順程は実力差はなかったと見ています。

 

△ アールスター

人気薄で小倉記念を制した同馬ですが、適性は意外とあるんじゃないかと見ての▲。

短い距離で走るイメージが少なからずあるロードカナロアの産駒ですが、実はこの条件は意外と得意にしています。母父のサッカーボーイは冬季に中長距離で活躍する仔や孫をよく出していたことでも知られる種牡馬。この祖父の血が上手く同馬に伝わっているようなら一発あっても不思議ではないかと。

 

前走の福島記念を制し、ここをも制して勢いに乗りたいオルフェーヴル産駒のバイオスパーク。昨年同時期くらいから力をつけてきているだけにここもあっさり勝ち切っても可笑しくはないので印を打っても良かったと思うくらい。ただ、前走の福島記念との比較で言えばそれ以上の適性ではないように感じられた為、斤量面なども考慮して同馬に僅差で敗れたヴァンケドミンゴやテリトーリアルを上に見ました。

トップハンデ58キロのカデナ。単に実績、能力で言えばG1大阪杯でも0.2秒差の4着に入り、重賞3勝を挙げているこの馬がトップかと思いますが、今の中山の馬場をこなすには32.2の上がりをマークしたこともある同馬だけにちょっと軽すぎる印象ですので、ここは切っています。マカヒキとは同じ配合パターンですが、こちらの方が斬れに偏ったタイプのようですね。

 

2020年 BMSランキング

BMSとはブルードメアサイアーの略称で、日本語で分かりやすく言えば母の父ということになります。

血統について触れる際に父について触れることが少なくないですが、母の父は当該馬の血の4分の1を占めている以上、無視しては通れないものとなります。

ここでは2020年のブルードメアサイアーのランキングについて触れていきます。

 

2020年 JRA BMSランキング

f:id:yuujiikeiba:20210101225541p:plain

ご覧の通り、長きに渡ってトップに君臨してきたサンデーサイレンスが遂に王者陥落となりました。トップに立ったのはキングカメハメハでした。

ではここからは個々について触れていきます。

 

1位 キングカメハメハ

デアリングタクトが牝馬三冠に輝いた他、ソダシ、インディチャンプなどがG1で活躍し、遂に王者サンデーサイレンスを降してリーディングに輝いています。

幅広い適性を持つことでも知られる同馬ですが、母の父としても父の特色を出しながら上手くレベルを底上げさせているようです。種牡馬としてはディープインパクトの前に敗れ続けてきましたが、BMSとしてはディープインパクトを超える資質を見せています。血統的にサンデーサイレンス系を始めとした主流血脈を配合しやすいのもBMSとしての活躍を後押ししているのでしょう。

 

2位 サンデーサイレンス

種牡馬としてだけでなくBMSとしても絶対的な強さを誇ったサンデーサイレンスですが、遂に陥落。産駒達も既に高齢になってきているだけに止む無しといったところ。

サンデーサイレンス産駒ということで成績の如何を問わずに繁殖入りされているケースも多く、質よりも量で勝負しているような成績となっています。

既に孫世代がかなりの活躍を見せており、同馬のインブリードを持つ馬も散見されるようになっています。BMSや種牡馬の父という立ち位置から次のステージに入ったと見ていいでしょう。

 

3位 クロフネ

BMSとしてクロノジェネシス、ノームコア姉妹で荒稼ぎして昨年に続いて3位を確保。勿論、この2頭以外にも多くの活躍馬を送り出しており、BMSとして優れた資質を発揮しています。種牡馬としてはやや一本調子な面を持っていた同馬でしたが、BMSとなったことで主張は薄れて種牡馬の特色を上手く引き出しています。

高めの複勝率はそのまま産駒の質の高さだと見ても良く、大物だけで稼いでいるわけではないことが窺い知れます。また、アウトサイダー血脈を持っており、配合の幅が広いのもこの好成績を後押ししているのでしょう。

 

4位 アグネスタキオン

一時はポストサンデーサイレンスの筆頭に挙げられた馬だけにこの馬の血を引く牝馬も多く1700回近い出走回数にもそれが現れており、3年連続の4位となっています。

超大物はいないもののオープン級の馬は多数出しており、自身のパワーを孫達にも伝えており、北米系のスピード系種牡馬との相性が良い傾向が出ており、ダートでの活躍が目に付きます。

 

5位 ディープインパクト

父としてはサンデーサイレンスと並んで史上最高クラスの成績を残す同馬ですが、BMSとしてはキングカメハメハに後れを取っています。BMSとして痛いのはサンデーサイレンス種牡馬と配合できないことでしょう。現時点ではキセキしかG1を制しておらず実績を鑑みればやや厳しいところ。ただ、25%を超える連対率にも現れているように産駒の水準は高く、いずれ大物の登場はあることでしょう。キングカメハメハ同様に本領を発揮するのはこれからでしょう。

 

 

尚、6位以下はシンボリクリスエスフレンチデピュティダンスインザダークフジキセキスペシャルウィークの順となっており、2000年代後半の群雄割拠状態の時期に活躍を見せていた種牡馬達の名が並んでいます。

その後、キングカメハメハディープインパクトの登場で2強種牡馬時代となったことを考えれば、この2頭がBMSとして今後更に勢いを増してくるものと思われます。

 

2020年 2歳リーディングサイアーランキング

昨年はキズナエピファネイアがいきなり多数の産駒を活躍させてランキング上位へ食い込んでみせた2歳リーディング。今年もドゥラメンテ、モーリスと大きな期待を受ける種牡馬が初年度産駒をデビューさせてきています。

データはJRAーVANより提供されているものを使用しています。

 

2020年 JRA2歳サイアーランキング

f:id:yuujiikeiba:20201231234057p:plain

2歳リーディングサイアーに輝いたのはディープインパクトでした。

G1での勝利こそありませんでしたが、レッドベルオーブなどの活躍でトップを堅持。

50%近い複勝率は驚異的でもあり、この数字からも産駒のレベルの高さが窺えます。

トップはいつものように王者ディープインパクトとなってはいますが、本年特に目に付くのは若い種牡馬の躍進でしょう。

2位にフレッシュリーディングサイアーにも輝いたドゥラメンテが、僅差の3位にはこちらも新種牡馬のモーリスが入り、世代交代を印象付けています。

ドゥラメンテディープインパクトをも凌駕する37勝をマーク。

種牡馬だけに早い時期からの仕上げが意識されていたとは言え、中距離戦が多くなる夏後半以降に続々と産駒が勝ち上がり、1勝、2勝を挙げた産駒が続出。

重賞勝ち馬が出ていない中でこの成績は相当なもの。重賞勝ち馬が出るのは時間の問題でしょう。

決して早熟タイプではなさそうな血統だけに今後も産駒の活躍が期待出来そうです。

自身が古馬になってから大きく力を付けたモーリスはドゥラメンテに僅かに及ばなかったものの、早い時期からガンガン使われていたこともあり、最多の260回出走。こちらも重賞勝ちこそ成りませんでしたが、既に多くの産駒が勝ち上がっており、いずれ重賞を制する産駒が出てくることと思われ、早くも父を上回る資質を感じさせています。

これらに続いたのが4位のキズナ、5位のエピファネイア

共に昨年産駒をデビューさせ、クラシック戦線でも活躍を見せた種牡馬です。

ここまで活躍が続けばもはや一過的なものではないでしょう。

キズナはモーリス同様、多くの産駒がコンスタントに出走、勝利しており堅実に賞金を稼いでいます。ディープインパクトの色はそれほど強くなくストームキャットの色が比較的強い為かパワーとスピードで押す産駒も多いようです。

オーソクレースを出したエピファネイアですが、キズナと比較してムラは大きい印象を与えていますが、実際のところ意外と堅実に勝ち上がる産駒も多く、きっちり賞金を重ねてきています。

6位にはロードカナロア。こちらも若い種牡馬ですが更に若い世代に推されてしまった印象。ただ、これからアーモンドアイらの登場後に種付けされて生まれた産駒達が現れるだけに水準が確実に上がると思われ、挽回の可能性は高いものと思われます。

7位はルーラーシップ、8位にハーツクライ、9位にはダイワメジャーと中堅、ベテラン種牡馬の名が入ります。

いずれも既に実績を残しており、今後もある程度の活躍は見せてくることでしょう。

10位にはこちらも新種牡馬リオンディーズがランクイン。

 

全体的には若い種牡馬達の活躍が目につく結果となっています。

上位にはいませんが、ジャスタウェイはダノンザキッドで初G1制覇を達成しており、新種牡馬ミッキーアイルは決して多くはない産駒の中からメイケイエールを出してきています。

無敗の2歳女王ソダシはクロフネ産駒。クロフネは高齢だったことで産駒数はかなり減っていたのですが、ここに来てまたも牝馬の大物を出してきました。

 

当たり前と言えば当たり前なのですが、社台系種牡馬がかなりの強さを示しています。

これはもう単に種牡馬の質の高さだけではないでしょう。

生産、馴致、育成、医療の部分が少なからず仕上がりの早さに影響してくることがこの結果が物語っていると言っても良いかと思います。

 

2020年 リーディングサイアーランキング

激動の2020年、日本の競馬界は開催の可否が常に問われる中で無観客開催などもありつつ、何とか無事に終了することになりました。

ここで本年の競馬界を支えてきたサイアー達のランキングを紹介します。

尚、データはJRAーVANより発表のものを使用しています。

 

2020年 JRAサイアーランキング

f:id:yuujiikeiba:20201231211313p:plain


結果は上記の通りで、ディープインパクトが2位のロードカナロアにダブルスコア近い差を付け、断然の成績で今年もリーディングサイアーに輝いています。

上位の種牡馬達はここ数年の上位の常連種牡馬達が占めており、昨年からも大幅な変動は見られません。

その一方で、昨年初年度産駒がデビューを迎えたキズナエピファネイアの両頭が成績を伸ばしてきています。

ディープインパクトキングカメハメハステイゴールドゴールドアリュールらは既にこの世を去ってしまっており、ハーツクライダイワメジャーらも既に高齢になってきていることを考えれば、そう遠くない将来にこのランキングにも大きな動きが見られることになりそうです。

 

1位 ディープインパクト

今年はコントレイルが無敗でクラシック三冠を制覇し、待望の最有力後継馬候補が誕生しました。また、他にもグランアレグリア安田記念で女王アーモンドアイに完勝、秋の短距離G1も連勝と輝かしい結果を残しており、天皇賞(春)ではフィエールマンが連覇を成し遂げるなど他の産駒達もレベルの高いレースでの活躍が多数あり、文句なしの圧倒的成績を残しています。

産駒は概ね芝での活躍が多く、ダートで結果を残す産駒がいないわけではないものの本年の重賞制覇は全て芝となっています。産駒の平均レベルそのものが高く、質、量共に近年国内最高の種牡馬に相応しい成績となっています。

距離的にはフィエールマンのように長距離に対応する産駒もいますが、マイル~中距離で結果を残す産駒が多く、瞬発力に優れた産駒が多いのが特徴です。

 

2位 ロードカナロア

何と言っても最強牝馬アーモンドアイの活躍が輝きます。本年はヴィクトリアマイル天皇賞(秋)ジャパンカップを制して芝G1戦9勝の新記録を残しています。

ただ、同馬以外にも香港スプリントを制したダノンスマッシュなど多くの活躍馬を出しています。産駒の1走あたりの獲得賞金額は244万円と全体に産駒の水準が高いことが窺えます。

産駒は概ね芝向きですが、ダートでのランキングでも4位となっており、配合によっては十二分にダートでも走れることを示しており、既にミッキーワイルドが重賞を制しています。

距離的には短距離~マイルあたりでの成績が良く、2000mを超えて活躍するアーモンドアイ、サートゥルナーリアはある種特殊な例とも言えそうです。

 

3位 ハーツクライ

今年はG1を制した産駒こそいなかったものの、毎日王冠を圧勝したサリオスがG1級の走りを何度も見せています。他ではタイムフライヤーやスワーヴアラミスが重賞を制する活躍を見せており、こちらも産駒の水準が高く、産駒の数に任せて稼いでいるのではないことも窺えます。

芝向きの産駒が多めではあるものの、ダートでの成績でもリーディング7位と健闘しており、アメリカでダートG1を制したヨシダもいるようにダートへの適性はあると言って良いでしょう。距離的には比較的長い距離に適性を持ち、殆どの産駒はマイル以上の距離で活躍しています。瞬発力はサンデーサイレンス系の中ではやや劣る一方で持久力で優れている産駒が多い傾向が見られ、やや晩成傾向もあります。

 

 

4位 オルフェーヴル

本年は代表産駒でもあるラッキーライラック大阪杯エリザベス女王杯を制する活躍。同馬だけでなくオーソリティジャスティン、バイオスパーク、オセアグレイトなどが下半期に大活躍してランキングを上昇させてきました。一時は産駒の出来不出来の波の大きさ故か『失敗』との烙印を押されかけた同馬ですが、流石に三冠馬と言わしめる底力を見せて浮上してきています。

芝向きのイメージが強いですがダートでのランキングでも8位と十分に走れることを示しており、ジャスティンが既に3重賞を制しています。

全体的には持久力に優れており、折り合いがつく産駒は中~長距離での活躍が見られます。

 

5位 キングカメハメハ

既に産駒は減りつつあるキングカメハメハが5位にランクイン。本年はチュウワウィザードがチャンピオンズカップで優勝、改めてダートでの強さも示しています。他にもエアスピネル、ユーキャンスマイル、ダイワキャグニーなどベテラン馬達の活躍もあり、存在感を示しています。

前述したように芝だけでなくダートでも際立つ活躍を見せており、力を要する馬場も無難にこなす産駒は少なくありません。距離的にも短距離から長距離まで様々なタイプを出してくる正に万能種牡馬。既に産駒達が種牡馬として活躍を見せており、自身は既にこの世にはいませんが、当面は日本の血統図にその存在を示していくことになります。

 

6位 ルーラーシップ

本年は産駒のG1制覇は成りませんでしたが、キセキが再三存在感を感じさせる走りを見せていました。他の産駒も重賞級で活躍を見せる馬もいましたが、アーニングインデック的には平均的で、質よりは量で掴んだ6位のランキングと言えそうです。

産駒達は主に芝で活躍。中にはダートで走る馬もいますが、大半の馬はその血統のイメージ通りに芝で成績を残しています。距離的には比較的長めの距離に適性を持つ馬が多く1800mを超えての成績が良くなっています。

瞬発力はそこそこながらスピードの持久性に優れており、キセキやダンビュライトがそのイメージに合致します。

 

7位 ダイワメジャー

本年は産駒のG1奪取こそ成らなかったもののレシステンシアやアドマイヤマーズがマイルG1でその強さを幾度も示していました。一時期と比較すると年齢的なものもあってか産駒数と共にその質もやや低下してきており、この7位というランキングとなっています。

JBCスプリントを制したブルドッグボスなどもいますが、産駒は総じて芝向きが多くなっており、その多くがマイルくらいの距離を得意としています。瞬発力はあまりないもののスピードの持続力には優れており、先行して押し切るような競馬を得意とする産駒が多く、アドマイヤマーズなどは正にそのタイプと言えます。大型馬ながら仕上がりは比較的早い馬が多いようです。

 

8位 キズナ

初年度から産駒が次々に勝ち上がり、G1勝利こそ出来なかったもののマルターズディオサ、ディープボンド、クリスタルブラック、アブレイズと続々重賞を制覇。いきなり8位へと食い込んできています。産駒の層が厚くなる来年以降は更なるランクアップが濃厚となっています。

産駒達は芝だけでなくダートでも好走例が少なくなく、父ディープインパクト以上に力を要する馬場への適性は高いようです。その一方で自身とは違い、瞬発力はそれほどでもなく、パワーとスピードの持続力で勝負する産駒が多くなっています。

距離的には中距離くらいを得意とする産駒が比較的多くなっています。

 

9位 エピファネイア

初年度から無敗で牝馬三冠を制する快挙を成し遂げたデアリングタクトを出して脚光を浴びています。重賞制覇は同馬だけでしたが、菊花賞ではアリストテレスがコントレイルと壮絶な一騎打ちを演じています。

産駒は総じて芝向きで、ダートではあまり結果を出せていません。自身は比類なきパワーからドバイワールドカップにも遠征した程ですが、そのパワーは決してダート向きのものではないようです。自身と同様に気性的に前進気勢が強い傾向があり、折り合いがつく産駒は長距離に対応してきているようで、折り合いがつかないタイプはマイラーになるケースも。

 

10位 ヘニーヒューズ

賞金水準が低いダート戦線に於いて多数の活躍馬を送り出し、本年はワイドファラオがかしわ記念を制覇。他にも数々の馬達がダート上級条件で活躍したことでリーディングトップ10入りを果たし、ダートでは長年トップに君臨していたゴールドアリュールを上回ってリーディングを獲得しており、今や日本を代表するダート種牡馬の1頭となりました。

前述しているように産駒の多くはダートで活躍しており、その多くは比較的短い距離で好成績を残しています。タイプによっては1800くらいまでこなす産駒も。

スピードに任せて飛ばしていくタイプが多くなっており、斬れで勝負する馬は割と少な目。

 

 

続いてダートのランキングを。

 

2020年 JRAダートサイアーランキング

f:id:yuujiikeiba:20201231230622p:plain

こちらは長年トップの座に君臨してきたゴールドアリュールが遂に陥落。

ヘニーヒューズにトップの座を明け渡しています。

芝でも活躍馬を送り出しているロードカナロアキングカメハメハハーツクライオルフェーヴルが上位に入っており、ダート専用的な種牡馬が伸び悩んでいる様子が見て取れます。ただ、アイルハヴアナザーは輸出され、ゴールドアリュールサウスヴィグラスは死んでしまっているため、こちらのランキングも近い将来にランキングが大きく変動していく可能性が強くなっています。

 

1位 ヘニーヒューズ

総合ランキングでも10位に入っており、丈夫な産駒が多く、短距離馬も多いことから出走数の多さににモノを言わせて稼いでいる印象です。

ただ、同馬も既に17歳と決して若い種牡馬ではないだけに長期政権とはいかないかもしれませんね。地方競馬でも稼げるタイプだけにしばらくはサウスヴィグラスの後釜的な立ち位置となりそうです。

 

2位 ゴールドアリュール

ダート種牡馬という括りに於いては日本史上最高の種牡馬と言っていいかもしれませんが、既に亡くなっており産駒も少なくなってきています。

代表産駒の1頭ゴールドドリームも引退し、クリソベリルも故障。

いよいよこの馬の時代も終わろうとしているのでしょう。

基本的には中距離向きですが、短い距離にも対応する産駒も出ています。

 

3位 キンシャサノキセキ

芝でも活躍馬を出す同馬ですが、ダートにも高い適性を持ち、ジリジリとその成績を伸ばしてきて遂に3位にまで進出してきました。

種牡馬入り当初はそれほど大きな期待は受けていなかったものの産駒が地道に走ったことで徐々にその評価を高めていきました。

基本的には短めの距離に適性を持ちますが、中にはマイル以上に対応する産駒も出ています。

 

2020年 有馬記念回顧

ちょっと遅くなってしまいましたが、有馬記念の回顧です。

 

ジャパンカップで世紀の対決を演じた3頭の姿はないものの、今年の中長距離戦線を代表する馬が多数出走してきたことで有馬記念として十分な水準の顔触れに。

結果、この1戦を制したのは人気のクロノジェネシスでした。

f:id:yuujiikeiba:20201231004703p:plain


f:id:yuujiikeiba:20201231000028p:plain


夕日が照らす中山競馬場、各馬とも滞りなくゲートイン。

発馬ではモズベッロが大きく出遅れ。キセキも出遅れ、それぞれ後方からのスタートに。

勢いよくハナを切ったのは3歳馬バビット。ブラストワンピース、クレッシェンドラヴの内枠2頭もこれに続き、オーソリティなどもこれに続く。

外目の枠を引いたフィエールマンは徐々にポジションを上げ、スタンド前で好位に取り付く。人気のクロノジェネシスは中団やや後方寄りに位置。

バビットの1000m通過タイムは62.2。

ワールドプレミアは4、5番手、その直後にカレンブーケドールが追走。

それから僅かに遅れてラッキーライラック、ラヴズオンリーユーが続き、出遅れたキセキとクロノジェネシスもこの位置取り。

後方からはサラキア、ユーキャンスマイル、モズベッロといった隊列。

残り1000mを残した地点で早くもクロノジェネシスがペースを上げ、前との差を徐々に詰めに入る。3コーナーへと入り、フィエールマンも2番手に浮上し、逃げるバビットを追う姿勢に。

4コーナーではフィエールマンが早くもバビットとの差を詰め、捉える態勢に。

中団からはクロノジェネシス、カレンブーケドール、ラッキーライラック、キセキがスパートしてその差を詰めに掛かる。

直線へ向き、早々にバビットを捉えて先頭に立ったのはフィエールマン。

それほど差のない2番手に外から上がってきたクロノジェネシス

この2頭の一騎打ち状態になり掛けたところで大外からサラキアが際立つ脚色で追いこんでくる。

最後は脚が上がったフィエールマンがやや失速、強烈な末脚を繰り出したサラキアの猛追を凌いだクロノジェネシスが優勝。

 

では、いつものように200毎のラップを。

尚、最初だけ100mのラップとなります。

 

6.8ー11.8ー12.2ー12.5ー12.5(1000m通過62.2)

12.8ー12.9ー12.8ー11.8

12.3ー12.1ー11.9ー12.6(ラスト1000m60.7)

 

全体感としてはやや遅めの平均ペースといったところ。

キセキが出遅れたこともあり、逃げたバビットは後続をやや引き離しながらも一定のラップを刻み続ける展開。

勝ったクロノジェネシスですが、強気にバックストレッチで進出を開始。

距離ロスが懸念された外枠のフィエールマンは巧みに先行集団に取り付き、3コーナー付近でロングスパート態勢に入ります。

このあたりでこれらの馬達に呼応するように各馬のペースが上がり、11.8のラップを記録しています。

ここで慌てることなくしっかりと脚を溜めて末脚に掛けたのがサラキアでした。

1000m以上にも渡るロングスパート合戦となったことで持久力に勝る馬達に優位な展開へと持ち込ませたのはフィエールマンとルメールでした。

ただ、それをそれ以上のロングスパートで捻じ伏せたのはクロノジェネシスでした。

また、他馬の動きに翻弄されることなく末脚を信じてラストの爆発力に掛けたのが松山騎手のサラキア。

上位3頭はそれぞれの持ち味を騎手達が上手く生かしてのレースとなりました。

 

では、上位各馬についても触れていきましょう。

 

f:id:yuujiikeiba:20201231000148p:plain

1着 クロノジェネシス

f:id:yuujiikeiba:20201231004829p:plain


ポイントとなったのは向こう正面でのペースアップでしょう。

やや後方の位置取りから3コーナー手前から早々にペースを上げています。

とは言え、1000m以上スパートしっぱなしでは流石に脚が持たないため、コーナーで僅かに追走のペースを緩めての追撃。一貫して乗り続けてきて同馬のことを知り尽くしている北村騎手ならではの強気な競馬が勝ちを呼び込んだと言って良いでしょう。

同日の中山芝コースは戦前から言われていたように馬場が荒れ、力を要する状態。

32秒台の脚を複数記録しているように瞬発力がない馬ではありませんが、やはりこうした馬場の方が適性は高いでしょう。

 

2着 サラキア

f:id:yuujiikeiba:20201231004942p:plain


恐らく最初から末脚で勝負するつもりでの騎乗だったのではないでしょうか。

有力馬が早めにスパートして持久戦へ持ち込む形になる中でも惑わされることなく、じっくりと後方で待機。

結果、ここでしっかり溜めたことが強烈な末脚を引き出すことになり、最後は止まりかけていた上位陣との差もあり、ゴール前での凄まじい勢いに繋がりました。

人気薄だったからこその騎乗ですし、夏以降良化していた馬の出来も抜群に良かったのでしょう。

同馬はサリオスのお姉さんですが、もし彼もまた姉のように更なる成長を見せるなら恐ろしいことになるやもしれませんね。

 

 

3着 フィエールマン

f:id:yuujiikeiba:20201231005113p:plain


距離ロスが懸念された外枠でしたが、ルメール騎手は無理にダッシュさせずに徐々に進出して前目の位置を取りに行きました。結果的にこれでレースの主導権を握る形となります。3コーナーでやや早めに始動し、バビットをいつでも捉えられる位置に付けたことで他馬も追随せざるを得ない形へと誘導しています。その結果、ロングスパート戦へと持ち込ませてきたのはルメール騎手の手腕と言えそうです。

最後はクロノジェネシスに屈してしまいましたが、やるべきことはやって敗れた、という印象。本質的にはスピードが生きる早い馬場に適性があり、ベストの条件ではない中で自身の走りは見せていると見ます。

 

4着 ラッキーライラック

道中は中団での競馬。しっかり流れにも乗ってソツのないレースを見せてはいましたが、ロングスパート戦では分が悪かったといっていいかと思います。やはり本質的には2000mくらいがベストで、力を要する馬場も決して得意ではなかったでしょう。

能力の高さで4着までは来ましたが、展開、舞台が不向きでした。

馬自身は自分の力はしっかりと出していると思います。

 

5着 ワールドプレミア

道中ではやや折り合いを欠き気味になるシーンも。3着だった昨年と大体似たようなパフォーマンスを示していると見ています。しぶとく伸びてはいましたが、上位3頭とはやや差もあり、力負けと言っていいかと思います。

ただ、キャリアもまだ少なく更なる良化の余地は残しているものと思います。

 

5着 カレンブーケドール

有力馬が動き出した時点で積極的に前へと進出しましたが、最後は止まってしまいました。流石にあれほどのロングスパート合戦となると最後まで脚が持ちませんでした。

とは、言え牝馬ながらこの厳しい展開でもこの差に踏みとどまったのは流石。

決め手がないだけに如何にして勝たせるかは当面の課題でしょうが、改めてG1級の能力は示しています。

 

 

各馬ともらしさを見せてきた馬が多く、見応えのあるレースとなりました。

ただ、このレースが来年に繋がるかと言うと、そこは微妙な気がします。

これほどタフな馬場状態は近年あまりないですし、展開的にも中距離ではあまり見られないものです。

仮にJRA風にレーティングを付けるのなら、以下の通りです。

クロノジェネシス  118

サラキア      117

フィエールマン   121

ラッキーライラック 114