うまコラ

競馬歴28年の筆者が綴る競馬コラム

2020年 有馬記念回顧

ちょっと遅くなってしまいましたが、有馬記念の回顧です。

 

ジャパンカップで世紀の対決を演じた3頭の姿はないものの、今年の中長距離戦線を代表する馬が多数出走してきたことで有馬記念として十分な水準の顔触れに。

結果、この1戦を制したのは人気のクロノジェネシスでした。

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夕日が照らす中山競馬場、各馬とも滞りなくゲートイン。

発馬ではモズベッロが大きく出遅れ。キセキも出遅れ、それぞれ後方からのスタートに。

勢いよくハナを切ったのは3歳馬バビット。ブラストワンピース、クレッシェンドラヴの内枠2頭もこれに続き、オーソリティなどもこれに続く。

外目の枠を引いたフィエールマンは徐々にポジションを上げ、スタンド前で好位に取り付く。人気のクロノジェネシスは中団やや後方寄りに位置。

バビットの1000m通過タイムは62.2。

ワールドプレミアは4、5番手、その直後にカレンブーケドールが追走。

それから僅かに遅れてラッキーライラック、ラヴズオンリーユーが続き、出遅れたキセキとクロノジェネシスもこの位置取り。

後方からはサラキア、ユーキャンスマイル、モズベッロといった隊列。

残り1000mを残した地点で早くもクロノジェネシスがペースを上げ、前との差を徐々に詰めに入る。3コーナーへと入り、フィエールマンも2番手に浮上し、逃げるバビットを追う姿勢に。

4コーナーではフィエールマンが早くもバビットとの差を詰め、捉える態勢に。

中団からはクロノジェネシス、カレンブーケドール、ラッキーライラック、キセキがスパートしてその差を詰めに掛かる。

直線へ向き、早々にバビットを捉えて先頭に立ったのはフィエールマン。

それほど差のない2番手に外から上がってきたクロノジェネシス

この2頭の一騎打ち状態になり掛けたところで大外からサラキアが際立つ脚色で追いこんでくる。

最後は脚が上がったフィエールマンがやや失速、強烈な末脚を繰り出したサラキアの猛追を凌いだクロノジェネシスが優勝。

 

では、いつものように200毎のラップを。

尚、最初だけ100mのラップとなります。

 

6.8ー11.8ー12.2ー12.5ー12.5(1000m通過62.2)

12.8ー12.9ー12.8ー11.8

12.3ー12.1ー11.9ー12.6(ラスト1000m60.7)

 

全体感としてはやや遅めの平均ペースといったところ。

キセキが出遅れたこともあり、逃げたバビットは後続をやや引き離しながらも一定のラップを刻み続ける展開。

勝ったクロノジェネシスですが、強気にバックストレッチで進出を開始。

距離ロスが懸念された外枠のフィエールマンは巧みに先行集団に取り付き、3コーナー付近でロングスパート態勢に入ります。

このあたりでこれらの馬達に呼応するように各馬のペースが上がり、11.8のラップを記録しています。

ここで慌てることなくしっかりと脚を溜めて末脚に掛けたのがサラキアでした。

1000m以上にも渡るロングスパート合戦となったことで持久力に勝る馬達に優位な展開へと持ち込ませたのはフィエールマンとルメールでした。

ただ、それをそれ以上のロングスパートで捻じ伏せたのはクロノジェネシスでした。

また、他馬の動きに翻弄されることなく末脚を信じてラストの爆発力に掛けたのが松山騎手のサラキア。

上位3頭はそれぞれの持ち味を騎手達が上手く生かしてのレースとなりました。

 

では、上位各馬についても触れていきましょう。

 

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1着 クロノジェネシス

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ポイントとなったのは向こう正面でのペースアップでしょう。

やや後方の位置取りから3コーナー手前から早々にペースを上げています。

とは言え、1000m以上スパートしっぱなしでは流石に脚が持たないため、コーナーで僅かに追走のペースを緩めての追撃。一貫して乗り続けてきて同馬のことを知り尽くしている北村騎手ならではの強気な競馬が勝ちを呼び込んだと言って良いでしょう。

同日の中山芝コースは戦前から言われていたように馬場が荒れ、力を要する状態。

32秒台の脚を複数記録しているように瞬発力がない馬ではありませんが、やはりこうした馬場の方が適性は高いでしょう。

 

2着 サラキア

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恐らく最初から末脚で勝負するつもりでの騎乗だったのではないでしょうか。

有力馬が早めにスパートして持久戦へ持ち込む形になる中でも惑わされることなく、じっくりと後方で待機。

結果、ここでしっかり溜めたことが強烈な末脚を引き出すことになり、最後は止まりかけていた上位陣との差もあり、ゴール前での凄まじい勢いに繋がりました。

人気薄だったからこその騎乗ですし、夏以降良化していた馬の出来も抜群に良かったのでしょう。

同馬はサリオスのお姉さんですが、もし彼もまた姉のように更なる成長を見せるなら恐ろしいことになるやもしれませんね。

 

 

3着 フィエールマン

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距離ロスが懸念された外枠でしたが、ルメール騎手は無理にダッシュさせずに徐々に進出して前目の位置を取りに行きました。結果的にこれでレースの主導権を握る形となります。3コーナーでやや早めに始動し、バビットをいつでも捉えられる位置に付けたことで他馬も追随せざるを得ない形へと誘導しています。その結果、ロングスパート戦へと持ち込ませてきたのはルメール騎手の手腕と言えそうです。

最後はクロノジェネシスに屈してしまいましたが、やるべきことはやって敗れた、という印象。本質的にはスピードが生きる早い馬場に適性があり、ベストの条件ではない中で自身の走りは見せていると見ます。

 

4着 ラッキーライラック

道中は中団での競馬。しっかり流れにも乗ってソツのないレースを見せてはいましたが、ロングスパート戦では分が悪かったといっていいかと思います。やはり本質的には2000mくらいがベストで、力を要する馬場も決して得意ではなかったでしょう。

能力の高さで4着までは来ましたが、展開、舞台が不向きでした。

馬自身は自分の力はしっかりと出していると思います。

 

5着 ワールドプレミア

道中ではやや折り合いを欠き気味になるシーンも。3着だった昨年と大体似たようなパフォーマンスを示していると見ています。しぶとく伸びてはいましたが、上位3頭とはやや差もあり、力負けと言っていいかと思います。

ただ、キャリアもまだ少なく更なる良化の余地は残しているものと思います。

 

5着 カレンブーケドール

有力馬が動き出した時点で積極的に前へと進出しましたが、最後は止まってしまいました。流石にあれほどのロングスパート合戦となると最後まで脚が持ちませんでした。

とは、言え牝馬ながらこの厳しい展開でもこの差に踏みとどまったのは流石。

決め手がないだけに如何にして勝たせるかは当面の課題でしょうが、改めてG1級の能力は示しています。

 

 

各馬ともらしさを見せてきた馬が多く、見応えのあるレースとなりました。

ただ、このレースが来年に繋がるかと言うと、そこは微妙な気がします。

これほどタフな馬場状態は近年あまりないですし、展開的にも中距離ではあまり見られないものです。

仮にJRA風にレーティングを付けるのなら、以下の通りです。

クロノジェネシス  118

サラキア      117

フィエールマン   121

ラッキーライラック 114