2019年 有馬記念回顧
21日朝、まさかのインフルエンザ発覚…のため、返されてしまい、自宅で有馬記念を見ることに…。
そんなことはさておいて、今年の有馬記念はG1優勝経験馬が11頭と空前の豪華メンバーが勢揃い。しかも、当初は出走の予定がなかったアーモンドアイの参戦が現実のものとなり、近年稀に見る盛り上がりを見せることになりました。
そんなスーパーG1となった有馬記念を制したのはリスグラシューでした。
宝塚記念を圧勝した同馬はこれでグランプリ連覇となり、ラストランで豪快なぶっ千切り勝ちを見せることになりました。
では、そんな有馬記念を振り返ってみましょう。
有馬記念 回顧
このレース、アエロリットの走りについて触れないわけにはいかないでしょう。
序盤から11秒台のハイラップを刻み続け、この馬自身が止まるまで全くラップが緩むシーンはありませんでした。
まるでマイル戦かのようなハイラップを刻んだアエロリット。
当然、単騎逃げの形にはなるのですが、多少離されながらも各騎手とも前が容易に止まらない今の中山の馬場を意識してか、数馬身後方から追走するのですが、それでも早過ぎました。
結果的に中団以前に位置した馬はバテて全滅。後方に位置した馬だけが脚を伸ばしてくることになりました。
最後はリスグラシューが坂を登って脚が止まっていく
改めてレースのラップを見てみましょう。
2500m戦なので最初は100m通過、以降はそこから200m毎のラップとなります。
6.9-11.1-11.4-11.4-11.5-12.2-12.3-12.1-11.7-12.3-13.4-12.2-12.0
勝ちタイムは2:30.5。
ご覧の通り、アエロリットが全く緩みを許さないラップを刻んだことで好位追走勢も息を入れるタイミングのないラップを強要されたような展開となっています。
こうなってしまうと求められるのは、まず位置取り、そして豊かな持久力。
その両面を持ち合わせていたのがリスグラシューであり、ワールドプレミア、フィエールマン、キセキといったところでした。
一方でアーモンドアイは中団やや後方に位置していましたが、早めに仕掛けた結果、最後は止まってしまいました。爆発的な瞬発力を武器にするアーモンドアイにこのタフなレースは向いていなかったと言わざるを得ないでしょう。
1着 リスグラシュー
道中は後方寄りの10番手付近に位置取り、以降は大きく動くこともなくじっくり待機。アエロリットが2500m戦としては殺人的なハイラップを刻んで逃げており、3コーナー付近からは各馬ともそれを多少なりとも意識して早めに捕まえに行かされた分、殆どの馬達は最後に脚をなくしてしまった中で、この馬だけが最後まで止まることなく独走態勢へと持ち込みました。
3歳時などはマイル戦などに良く使われていましたが、この馬の本質はむしろステイヤーに近いものでした。一瞬の斬れる脚がない分、短い距離では取りこぼしも少なくありませんでしたが、今回の有馬記念のように持久力の求められるレースにはうってつけの資質を持っていたようです。
勿論、それもレーン騎手の見事な騎乗があってこそ、です。6番枠と先行しやすい枠に囚われることなく、ペースを見極めて焦らずにインの後方でロスの少ないコース取りをしながらスパートのタイミングを見極めたからこそ、最後にあれだけの脚を使えたのでしょう。
2着 サートゥルナーリア
この馬も飛ばしまくる前を他所に後方4番手付近でじっくりと待機。先頭からここまで離された位置で競馬したことのない馬ですが、ここはスミヨン騎手のファインプレーでした。勝ち馬より早めに仕掛け、馬場の中ほどから脚を伸ばしてきました。直線、坂を上り切ったあたりで一瞬、止まるかというところで外からリスグラシューが来るや食らいつこうと更に脚を使って後続を振り切る姿を見せています。卓越した瞬発力を持つ同馬にとって決してベストな展開ではありませんでしたが、その中で概ねベストを尽くせたのかな、という印象です。仮に仕掛けがもう少し遅めであってもリスグラシューには勝てなかったでしょう。
今回はパドックから馬場入り、ゲートインまで入れ込む様子もなく落ち着きを見せており、馬自身の能力自体はベストの展開でなくともこれだけの走りが出来る程高いものであることは証明されたかと思います。
3着 ワールドプレミア
道中はほぼ最後方に位置。結果としてこの位置で脚をしっかり溜めたことで最後の伸び脚に繋げることになりました。そのあたりのペース判断は流石、名手武豊といったところで、彼のペース判断能力は現役騎手の中でもトップクラスにあるように思います。
菊花賞はG1とは名ばかりの低レベルメンバーと揶揄されるレースで、それを僅差で制した馬だっただけに陣営からもさらなる成長を、というコメントも聞かれましたが、その言葉通りもう1段階の成長を見せてきたのかもしれないですね。
3頭出走した菊花賞馬の中で再先着したのですから現時点でこれらと近いくらいの評価はしても良いかもしれませんね。
4着 フィエールマン
決してベストと言える状態ではなかったかもしれませんが、後方よりに待機してロングスパートする形で4コーナーで上位に進出してきてリスグラシューが来るまでは先頭争いを演じようかという走りを見せています。結果的にやや早仕掛けだったのですが、それでも止まることなく粘っているあたりは流石の実力と言えるものです。
抜群の持久力の片鱗は十分に見せており、来春の天皇賞に於いても最有力候補であることは間違いなさそうです。
5着 キセキ
出遅れ気味のスタートだったこともありましたが、キセキと言えば「逃げ」というイメージが少なからずある中で、無理に行かせようとせず、後方5番手という思い切った待機策となりました。ここは流石に世界的名手、R・ムーアというところで、これまでの走りに囚われることなく控える競馬を試みたことで最後のしぶとい末脚へと繋がることになりました。
現状でこの馬が出せる実力は示したのではないでしょうか。
アーモンドアイに関してはある程度やむを得ない結果だったかと見ています。
大きな人気を背負う馬の宿命的なものもありますが、厳しいペースでありながら早めに前を捉えに行かなければならず、結果的に仕掛けが早過ぎたことは確かでしょう。
また、瞬発力が最大の武器である同馬にとっては瞬発力が生かしにくい馬場、コースとともに持久戦となったことで長所が封じられてしまった印象です。
これでは流石に敗れてしまっても仕方ないと思います。