うまコラ

競馬歴28年の筆者が綴る競馬コラム

2019年 天皇賞(秋)回顧

G1勝ち馬10頭が出走と言う近年でも稀に見る好メンバーで行われた天皇賞。

今年最大の注目度と言っても過言ではないこの1戦を制したのは断然の1番人気に推されたアーモンドアイでした。

 

では、この天皇賞について振り返ってみましょう。

 

天皇賞(秋)回顧

週後半の雨で渋っていた馬場もほぼ回復し、良馬場となった天皇賞。

準メインの3勝クラスでは芝マイルで1:32.0の好タイムが出ており、このレースも早いタイムでの決着が予想されました。

 

好スタートを決めたのが先手を奪うことが予想されていたアエロリット。

人気のアーモンドアイもまずまずの好スタートで好位を取りにアエロリットを追走。

サートゥルナーリアは外目からやや勢いを付け、外からアーモンドアイに被せるように前目の位置取りを主張。この勢いに怯んだのかアーモンドアイは2コーナー手前で内ラチに当たる場面も。

アエロリット、戸崎騎手はそれほど抑え込まず馬なりで先頭を疾走、それほど離されずにドレッドノータス、スティッフェリオ、サートゥルナーリアが追走。

アーモンドアイはその直後、外にダノンプレミアム、ウインブライト。

それを追う形でスワーヴリチャードが続き、少し離れた位置にユーキャンスマイル、マカヒキらが追走する形で2コーナーを回り、バックストレッチへ。

隊列は大きく変わらず、アエロリットのマークした前半の1000mの通過タイムは59秒ジャスト。

アエロリットはほぼ馬なりのまま1馬身程のリードを保ったまま馬群はやや詰まって3コーナーへと進出。

アエロリットの直後にアーモンドアイ、ダノンプレミアム、サートゥルナーリアが続き、直線へと。

直線に向いてもアーモンドアイは最内。抜け出す進路が狭くなってはいますが、依然ルメールは持ったまま。

直線の坂を迎えて、アエロリットが僅かに先頭もその外からダノンプレミアム、サートゥルナーリアが接近。

ここで僅かにサートゥルナーリアの脚色が鈍ったところでアーモンドアイは迷うことなくラチ沿いの最内に潜り込み、一気にスパート。

この勝負所で一気にアーモンドアイが抜け出して後続を突き放して勝負有り。

アーモンドアイが3馬身突き放して圧勝。勝ちタイムは1:56.2。

接戦の2着争いはしぶとく脚を伸ばしてアエロリットを競り落としたダノンプレミアム。最後に鋭くユーキャンスマイルが脚を伸ばしてくるも届かず、アエロリットが3着、ユーキャンスマイルが4着。

ダービー馬ワグネリアンも良い伸びを見せるも5着まで。サートゥルナーリアは6着。

 

このレースのラップは、12.8-11.4-11.5-11.6-11.7-11.6-11.3-11.1-11.3-11.9。

前半1000mが59秒0、後半1000mが56秒6。

一見するとスローペースという表現になりそうですが、注目すべきは変則ラップだったこと。

普通、2ハロン目はもっと早いラップになりやすいのですが、意外に遅く11.4。

各馬ともアエロリットが作るペースに対して慎重になっていたのか誰も無理に追うことがなかったためかアエロリットは楽な序盤の展開となっています。

ここからはアエロリット、戸崎騎手が自分の展開へと持ち込みます。

持ち味でもある高いスピードの持続性を生かすように11秒6前後のラップを淡々と刻み続けます。

序盤こそ遅いペースだったものの、ここからは全く緩みを見せずに流れ続けることになります。

こうなると後続の馬達はなかなか上手く脚を溜めることが難しくなってきます。

ただ、直線手前からは好位につけていた馬達がプレッシャーを掛けてきた為にやや早めにペースアップする展開に。

結果、ラスト1ハロンでは殆どの馬が力を使い切る形となり、決して単なるスローの瞬発力勝負にはなっていなかったことが窺えます。

 

では個々の馬について簡単に。

 

アーモンドアイ

内の好枠をひいた事での先行策。ラチにぶつかるシーンもありましたが、単純に馬自身が強かったですね。直線では前が開かない場面もありましたが、ルメールは焦らず進路が開く隙を窺っていました。アエロリットの内に入った時点で勝負は決したと言って良いでしょう。

馬自身の圧倒的なポテンシャルとルメールの落ち着いた好騎乗で他の追随を許さない完勝劇でした。

 

ダノンプレミアム

安田記念の大敗で良くないイメージが少なからずあったでしょうが、やはり能力自体はG1級でした。川田騎手もソツのないレース運びを見せましたが、馬の能力の差と言わざるを得なかったかと思います。

この馬自身、爆発的な瞬発力よりもスピードの持続性に優れていた点に於いても展開は向いていたものと思います。

 

アエロリット

戸崎騎手は完璧なレース運びが出来ていたように思います。

前述したように他馬が積極的に競り掛けてこなかったことで後続との差は少なかったながらも馬との折り合いをつけながら一定のラップを正確に刻み続けたことで終盤でも驚異的な粘りを発揮し、ダノンプレミアムと壮絶な2着争いを演じてみせました。

ただ、ほぼ完璧なレース振りだっただけに次走以降にこの水準のパフォーマンスを求めるのはやや厳しいようにも感じます。

 

ユーキャンスマイル

馬自身の能力が高かったことは間違いないと思いますが、岩田騎手の好騎乗も多分にあったでしょう。互いに意識し合う先行勢を意識し過ぎずにじっくり後方で待機。

結果的にここで脚を溜めることが出来、最後の鋭い伸びに繋がりました。

比較的長く脚を使えるこの馬には最後に前が止まりかける展開は向いていたと思います。

 

ワグネリアン

外目の枠を引いていたこともあり、比較的後方で待機する展開。福永騎手は馬の能力を信じてじっくりと脚を溜める策に出ましたが、長くしぶとく脚を使うタイプでもないだけに決して楽な展開ではありませんでしたが、それでも最後は2着争いに加わろうかという走り。流石にダービー馬と言う実力の一端を示しています。

 

サートゥルナーリア

スミヨンはアーモンドアイを負かすべく積極的に前に進出、是が非でもアーモンドアイの前に出るという気迫が感じられた序盤でしたが、馬自身が力みがちに走っていたことがレース後に語られていました。また、一瞬の斬れを身上とするこの馬にはなし崩しに脚を使い続けるようなこの展開は決して向いてはいなかったと思います。

気性的な危うさを露呈してしまいましたが、それ以上に展開自体が不向きだった印象です。