2019年 オークス回顧
桜花賞と並び牝馬G1としては最高の格を誇るオークス。
そんな今年のオークスをレースレコードで制したのはリアルスティールの全妹、ラヴズオンリーユーでした。
これでラヴズオンリーユーは4戦無敗。
また1頭、将来が楽しみになる馬が現れました。
まず、最初にこのレースの200m毎のラップタイムを見てみましょう。
12.5-10.9-11.7-11.9-12.1(1000m通過59.1)
12.2-12.3-12.2-11.7-11.4(2000m通過1:58.9)
11.6-12.3(2:22.8)
凄くざっくり言うとやや早めのペース、と言っていいかと思います。
こういったペースとなったのにはいくつかの伏線があったように感じます。
まず、ここ最近の東京競馬場の高速馬場。
特に印象的だったのが先週のヴィクトリアマイル。
アエロリットがスプリント戦並の高速ラップでガンガン飛ばしながらも、勝ち馬と大きく離されることなく5着に粘り込んでいました。
それだけの超速ラップとなったものの、結果的に上位に入れたのは中団までに待機していた馬達。
ある程度の位置を確保しないことには容易に勝負にはならない、と各騎手、各関係者に強く印象付けるには十分な1戦であったかと思います。
このレースに限らず、青葉賞でも積極的に逃げたリオンリオンが粘り込んでいたり、先行出来た馬の強さがよく目についていました。
まず先手を取ったのは最内枠を引いたジョディー。
この馬としては中途半端に溜め逃げしても瞬発力の違いで捉えられると思われるだけにある程度、しっかり前に出していくことを選択したように思います。
そのジョディーにピッタリとついていったのが人気の一角、コントラチェック。
エールヴォアも離されないように殆ど差のない追走となりました。
このあたりの馬達は少なからず、容易に前が止まらないこの馬場を踏まえて中途半端に抑えた競馬をするよりはしっかりと出していっても止まらずに走れるのではないかという打算も少なからずあったかと思います。
それらの馬達を前に追走していった各馬ですが、こちらも前に行った馬達から大きく離されてしまっては届かなくなってしまうという不安は少なからずあったのか、決して遅くは感じられない流れを感じていながらも離されないように追走。
特に前に有力馬であるコントラチェックがいただけに各馬ともこれを意識した競馬になったものと思います。
早めの流れのレースには珍しく、馬群は縦長になることなく続いて行っていました。
例年のオークスならば、3歳牝馬に2400mという距離は非常に厳しい条件ということもあり、各馬とも折り合いを重視しながら直線まで余力を残すべく脚を溜める、というパターンが多くなっており、ペースは落ち着き、マイラータイプの馬でも好走することが多い、という結果に繋がっていますが、結果的にこのペースはいくら高速馬場の東京競馬場とは言え、流石に3歳牝馬達には厳しいものになったかと思います。
では、上位の各馬について触れてみましょう。
ラヴズオンリーユー
道中は中団やや後方寄りの位置で待機。鞍上を務めたデムーロ騎手はジョディーの武藤騎手が積極的に逃げるのを確認し、この早いペースを見越したものと思います。
馬群が4コーナーを向いても焦らずジッと待機し、直線に向くやその末脚を炸裂させました。
ジャパンカップと見紛うかのような好タイムをマークした馬の能力はさることながらスタミナを削りながら追走していた他馬に惑わされることなく腹を括って脚を溜めたデムーロ騎手の好騎乗が非常に大きかったように感じます。
キズナ、ラキシス、リアルスティール、エイシンヒカリらを出し、今や黄金配合とまで言われるディープインパクト×ストームキャットの配合ですが、これらの馬達を見てもわかるように結構距離は持つ馬が多く、この馬もまたそうしたタフさを内在していたのでしょう。
カレンブーケドール
3歳牝馬にとってはかなり厳しい流れとなっていた中で道中は好位で追走。
そのままジリジリと粘っただけでなく、最後は勝ったラヴズオンリーユーを捉えようかという勢いでこれに食らいついていきました。
ある意味、このレースで最も強いレースを見せた馬ではないかと思います。
この馬の1800m通過が1:47.7ですが、ここから35.1の脚を使ってきたのは並のパフォーマンスではないでしょう。
これまでの実績、血統などから距離的には不安があるだろうと見ていたのですが、この走りは十分な持久力なくしては出来ないものと思います。
母父は短距離系のスキャットダディですが、この馬自身は決して単なるマイラーではないんじゃないかと感じます。
クロノジェネシス
後方からのイメージが強い同馬でしたが、前述したように今の東京競馬場の超高速馬場を鑑み、コントラチェックから離されることのないようマークするような形で道中は4番手と今までにない積極的な位置での競馬。
頑張ってはいましたが、最後は止まってしまって上位2騎にはやや離されてしまいました。
仮に勝ち馬と同じ位置にいたなら勝っていたかもしれませんね。
印象としては例年のクラシックで入着~勝ち負けクラスの力量は十分にあるものの、牡馬G1クラスを相手に出来る程ではない、そんな力量といった印象です。
ウィクトーリア
前走フローラステークスで後方からの競馬で結果を出したということもあったのでしょうが、かなりの後方からの競馬に。
スタミナを浪費せずに追走したことで父、母から引き継いでいるであろうスピードの持続性が生きた形になったかと思います。
上手く乗られた、そういった印象です。
今後の成長次第ですが、母が制した秋華賞でもチャンスはあるかもしれないですね。
ダノンファンタジー
この馬も前を意識してか、クロノジェネシス同様に先行策に出ていました。
結果的にここでスタミナを浪費してしまったために最後は末が甘くなってしまいました。
クロノジェネシスとは0.1差と好勝負しているように阪神ジュベナイルフィリーズ、桜花賞で見せているようにこの馬とはほぼ同等クラスの力量だと見ていいのかもしれません。
クロノジェネシス同様苦しい展開ながらも大きく崩れずに堪えているようにラヴズオンリーユーを含めて力量は決して見劣ることはないと思います。
3歳牝馬には厳しい距離である2400m。
例年ならばこの厳しい距離を上手く乗り越えるために各騎手ともペース配分に非常に気を使い、慎重にレースを進めることが多いですが、この超高速馬場をあまりに意識するあまりに積極的にレースを進めてしまった馬が多かった結果、「3歳牝馬の2400m戦」というよりはまるで古馬牡馬が見せるような「やや早いペースの2400m戦」に変貌してしまった印象を受けました。
その結果、半数の馬はゴールまでまともにスタミナを持たすことすら出来ずに敗れると言うサバイバル的なレースとなりました。
このレースを受けてダービーがどのような展開になるのか非常に読むのが難しくなりましたね。