うまコラ

競馬歴28年の筆者が綴る競馬コラム

2019年 安田記念回顧

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結論から言うと不完全燃焼感の強いレースとなってしまった今年の安田記念、勝ったのはインディチャンプでした。

 

では、このレースの回顧を行っていきましょう。

 

レース回顧

スタートでアーモンドアイとダノンプレミアムが出遅れ気味の発馬。

その直後に大外16番枠のロジクライが急激に内に切れ込んできて外目の枠からスタートした各馬の進路を完全にカット。

アーモンドアイ、ダノンプレミアム、ペルシアンナイト、ロードクエストあたりは加速したいタイミングで引かざるを得ずに後方からの競馬に。

外での出来事をよそにレースを先導したのはアエロリット。

それを追う形でグァンチャーレが2番手追走、インディチャンプが3番手での追走に。

そのやや後方よりロジクライ、サングレーザー、モズアスコットが追走し、人気のアーモンドアイとダノンプレミアムは後方から5番手程の位置からの競馬になり、ペルシアンナイトは最後方から行く形に。

アエロリットが刻んだ前半の800mの通過ラップは45.8。

絡んでいく馬はなく、アエロリットはスピードを保ったまま馬群は3コーナーから4コーナーへ。

前半でヴィクトリアマイルより1秒も遅いラップで走っていただけにアエロリットは直線に向いてもまだ手応えは十分。グァンチャーレを筆頭に他馬もそれを追うもなかなかその差は縮まっていかない。

アーモンドアイは馬群の中、狭いところから進路を探しつつ追撃態勢に。

ラスト200mを切ったところでアエロリットの脚色が僅かに鈍ったところで好位追走のインディチャンプがグイグイと脚を伸ばして並びかける。

ゴール手前でインディチャンプに先頭が代わり、外から馬群を割って抜け出したアーモンドアイが猛然と迫るも時すでに遅し、でそのままインディチャンプが先頭でゴール。

アーモンドアイは僅かにアエロリットに届かずに3着。

ダノンプレミアムは直線で完全に失速して最下位に入線、直後に川田騎手があまりの失速振りに下馬して場内は騒然としたままレースは確定しています。

 

では個々について触れてみましょう。

 

インディチャンプ

スタートを得意にする福永騎手らしく、スタートを決めるや好枠を生かしてすんなり3番手につけ、逃げるアエロリットを見るような位置で追走。

以前と違い、折り合いもきっちりついてスムーズな追走。

外でのハプニングを尻目に前を見ながら絶妙のポジショニングでアエロリットを追走出来たことが最大の勝因となりました。

直線でも早めに抜け出せさせないタイミングで追われ、きっちりとアエロリットを捉えてゴール。現時点でこの馬が出来るほぼ100%の力を出すような展開となりました。

展開がこの馬に向いたのは間違いないですが、1年近くコンビを組んできた福永騎手の巧みな好騎乗と先を見据えながら競馬を教えてきたことが上手く実った印象です。

前に少し触れてはいるのですが、マイルだけでしか走れない馬ではないんじゃないかと思っており、天皇賞(秋)あたりでこの馬の雄姿を見てみたい気はします。

 

アエロリット

ヴィクトリアマイルでこれでもかとペースを吊り上げていましたが、今回はやや遅めのペースに落としての逃げとなりましたが、競り掛けてくる馬はいませんでした。

結果、戸崎騎手とアエロリットは3ハロン目から11.1~11.4の一定したラップを1400mまでまるで機械のように刻み続けて、この馬の持ち味でもあるスピードの持続力を最大限に生かした走りを見せることになります。

ラストもバテることなく11.6でまとめており、この馬的にはほぼ完璧なラップだったかと思います。

他馬が絡んでこなかったことで思い通りのラップを刻んで逃げることが出来たのは何より恵まれていたのですが、それを絶妙に引き出した戸崎騎手は流石といったところでしょう。

この馬も現状で出しうる実力はほぼ出し切れているものと思われます。

 

アーモンドアイ

スタートでロジクライに寄られて大きく後退せざるを得なかったのが何より痛いレースとなってしまいました。

しかも前が流れなかったことで後方につけた馬にはほぼノーチャンスというペースに。

加えてコーナーでは外にピッタリとつけたダノンプレミアムに蓋をされてしまい、思うように進出出来ない状態。

直線でも前が壁になり、進路を確保できたのは直線も中盤に差し掛かった頃。

ただ、そこから凄まじい脚を繰り出してあわや差し切るかという程の鬼脚を見せてきました。上がり3ハロンはやや抜けた最速タイムの32.4。

負けはしましたが、改めてこの馬の桁外れの強さが浮き彫りにもなったレースでもありました。

ただ、この馬の立場としてはその強さは既に十分に周知されており、求められるのは強さを示すことではなく、結果を残すことでしょう。

破格の強さは示されると共に実に痛い敗戦となってしまいました。

 

グァンチャーレ

内目の好枠を引いたこともあり、逃げたアエロリットを2番手で追走。

この楽なペースを先団で進められた上に有力馬数頭が序盤で大きな不利を受けたことでこの馬にはおあえつらえの展開となりました。

もちろん、マイラーズカップで展開が向きながらも好走したように今の出来の良さなくしてはこの好走はなかったものと思います。

ただ、着順通りの評価までは出来ないと思われます。

今後、重賞に出走して人気になるようなら軽視してもいいかと思います。

 

ダノンプレミアム

アーモンドアイ同様、スタート直後の不利で事実上レースは終わってしまいました。

それでも川田騎手は勝負を捨てることなく、アーモンドアイの外にピッタリ寄せて進路を封じていました。結果的にはそれがなければ、アーモンドアイは不利を物ともせずに勝っていた可能性は十分にあったかと思います。

ただ、直線では完全に失速(とは言え、上がり34.5。これを「失速」とは言いにくいですが)し、レース直後に川田騎手が下馬して場内は騒然とすることに。

結果的に診療所では異状なしとの診断が下ったらしく最悪の事態とはなりませんでしたが、精神的な面も含めてダメージは少なからずあったかと思います。

 

 

総括

競馬関連の掲示板などを見ると荒れに荒れてしまっていました。

ロジクライに騎乗していた武騎手は1日間の騎乗停止処分が下されています。

個人的に感じたのは、武騎手自体はスタート直後に内に切れ込んだロジクライを立て直そうと手綱を引いている姿も確認出来、内にいったのは騎手でなく馬の意思が強かったことがわかります。

武騎手を叩きたい気持ちはわからなくはないですが、かつてメジロマックイーンの斜行で問題になった天皇賞の時とは事情が異なります。

もちろん、ロジクライを管理していた厩舎関係者の責任は少なからず問われるべきだとは思いますし、馬は再審査となっています。

ただ、走っているのは所詮は「馬」なんですよね。

いくら日々の調教で人間にコントロールされるようにしつけられ、騎手に誘導されているとは言えども、動物である馬である以上は、こうしたアクシデントをゼロにすることは難しいとも思います。

そして勝ったインディチャンプですが、これはG1に相応しいだけの走りは十分に見せていると思われます。

実力と運をもっとも併せ持っていたのがインディチャンプだったと言うことでいいかと認識しています。