2020年 ヴィクトリアマイル回顧
東京競馬場では上半期の最強古牝馬決定戦ヴィクトリアマイルが行われました。
有無を言わせぬ圧倒的な強さを見せつけ、アーモンドアイが楽勝。
誰もがその桁違いの強さはわかっていながらも、改めて眼前にその走りを見せられてしまうと今更ながらもその強さに呆れてしまったかと思います。
では、ヴィクトリアマイルの回顧、まずは総括から行きましょう。
ヴィクトリアマイル 総括
レースを前にディメンシオンとセラピアが出走を取り消し、トーセンブレスは大野騎手の負傷に伴い、柴田善臣騎手へと乗り替わりとなったこのレース、でしたがパドックや返し馬で激しく入れ込む馬もなく、スタートも大きく出遅れる馬もなし。
外目からトロワゼトワルが果敢にダッシュを利かせて先頭に、コントラチェックも前を窺う姿勢も無理に追うことはなく、2番手での追走。
外からサウンドキアラがこれを追い、ダノンファンタジーもスムーズな加速で前目の位置を確保。
人気のアーモンドアイは好スタートからこの先行集団を5番手付近で追走。その直後、外には昨年覇者のノームコア、さらにラヴズオンリーユー、プリモシーンらが続いていき、人気所は概ね前目の位置を確保。
前半の800m、トロワゼトワルの通過タイムは45.6。
逃げ続けるトロワゼトワルは大きくペースを落とすことなくほぼ一定のラップを刻み続け、馬群はそのままコーナーへと。
アーモンドアイは全くの馬なりのまま、僅かにその差を詰めながら進出。
直線に向いて逃げるトロワゼトワルを始めとする各馬が仕掛け、鞍上たちのアクションが大きくなってきている中、ただ1頭アーモンドアイだけが全くの馬なりのまま前を射程圏に入れる。
鞍上のルメール騎手が軽く仕掛けるや並ぶ間もなく先頭に。
ラスト1ハロンを切ったところでアーモンドアイのルメール騎手が後ろを振り返り、その差を確認して残り100m以上を残して追うのをやめ、後は流しただけで余裕のゴール。
4馬身離された2着には先行して必死に粘ったサウンドキアラがノームコアの追撃をクビ差抑えてゴール。ノームコアはよく脚を伸ばすも一息足らずに3着。
逃げたトロワゼトワルは4着に粘り込む。
では、このレースのラップを見てみましょう。
12.0-10.9-11.3-11.4(前半800m45.6)
11.1-11.2-11.1-11.6(後半800m45.0)
淀みなく流れてはいるのですが、アーモンドアイにとってはこれは「スローペース」だったということでしょう。
一度も大きく緩むことのないペースを刻んだトロワゼトワル、最後は流石に止まってしまいましたが、彼女のタイムは1:31.4。
この馬が自身の力を出すにはちょうど良いラップを刻んでいます。
ただ、それでもこの日の東京は容易に前が止まらない馬場で、出走した殆どの馬が33秒台前半の上がりを駆使しています。
こうなると前目に付けないことには勝負に参加する事さえ難しい状況だったと言って良いでしょう。
ただ、アーモンドアイに関しては馬なりで楽勝していながら上がりは32.9。
これでは勝てる馬などあろうはずもないでしょう。
では、ここからは上位各馬の寸評に行きましょう。
ヴィクトリアマイル 上位各馬寸評
1着 アーモンドアイ
結果から言えばスムーズに走れさえすれば敵などいなかった、そんなレースでしょう。
好スタートからすんなり前目の位置を確保し、絶好位とも言える5番手での追走。
余程、手応えにも余裕があったのでしょう。直線に向いてもルメール騎手は追うことなく馬なりで各馬の動きを見ていました。残り2ハロン付近で軽く追うや苦も無く前をあっさりと交わし去り、ラスト1ハロンを切った付近で後ろを確認して追う事すらやめてしまいましたが、その差は全く縮まることなく4馬身差での楽勝。
もう次元が違い過ぎるとしか言えません。このレースに於いてこの馬に勝てる馬は世界中どこにも存在しなかったのではないかとさえ感じられました。
恐らくディープインパクトやオルフェーヴルが出ていても勝てなかったと思われます。
2着 サウンドキアラ
離されはしましたが、この馬の能力はしっかり出し切っていると感じられます。ラップ推移で言えば、この馬がもっともバランスの良いラップを刻んでいます。
前に行きながらも早めに仕掛けていったのですが、今回ばかりは相手があまりに悪過ぎたとしか言えないでしょう。これまでにない早い馬場でも力を出しており、完全に本格化したと見られます。
松山騎手の積極的な騎乗も良かったと思われます。
3着 ノームコア
昨年の優勝時とほぼ同じ水準のパフォーマンスは示していると思います。
アーモンドアイを追う位置となってしまっただけに置いていかれてしまっていますが、33.2の末脚を繰り出しており、2着馬以上の強さを示す走りは見せています。
贅沢を言えばもう2、3馬身前で競馬をしたかったというところでしょうか。
東京競馬場の芝コースへの適性は高く、安田記念、天皇賞(秋)などでもその走りを見てみたいところです。
4着 トロワゼトワル
迷うことなくハナを取りに行き、そこから緩めることなく早めのラップを刻み続けた姿勢は昨年のアエロリットを見るようでした。ただ、無闇に飛ばしているというよりはラストでも何とか12秒台中盤くらいの脚を残せるよう計算されたペース配分でした。
きっちり自分の走りは出来ています。
展開が噛み合うか否かで結果に差がつきやすい馬ですが、このくらいはやれる能力は十分あったものと見ます。
5着 ダノンファンタジー
アーモンドアイを後ろから見るような位置をスムーズに取れ、自分の競馬は出来ています。ただ、上を狙うにはもっと前につける必要があったように思います。
ただ、この馬の持ち味はギアチェンジしてからの瞬発力にあるだけにあの位置となったのでしょう。色々言われてはいますが、既に2歳時に見せていた強さは取り戻していると見ます。
7着 ラヴズオンリーユー
上記のダノンファンタジーよりやや後ろでの競馬。この馬も良い脚は使ってはいますが、掲示板を確保できなかったのは位置取りの差も少なからずあったかと思います。
ただ、これでもまだベストの状態にはなかったように感じます。
恐らくしっかりと立て直すことが出来ればもう一段上のギアを出してくる馬ではないかと見ています。
ジャパンカップ、安田記念、天皇賞(秋)、そしてヴィクトリアマイル。
東京競馬場で何度となく背筋が凍り付くほどの強さを見せつけてきたアーモンドアイ。
体質的な面からこれまで余裕を持ったローテーションが組まれてきたアーモンドアイだけに中2週となる安田記念への参戦の可能性はあまり高くはないと思われます。
中5週となる宝塚記念へと向かうのか、それとも春はこの1戦に留めて秋へと備えることになるのか。
それとも未知なる舞台を求めていくのか。
いずれにしても今後の動向が注目されます。