うまコラ

競馬歴28年の筆者が綴る競馬コラム

凱旋門賞へ

先日、人気薄ながらも日本ダービーを見事に制したロジャーバローズの凱旋門賞への参戦が明かされました。
日本ダービーを勝ってすぐにオーナーからは秋は菊花賞ではなく、凱旋門賞へ挑みたいという意思が示されており、それに応えた形となったようです。

また、菊花賞、天皇賞(春)を制して、最強ステイヤーとしての立場を確立したフィエールマンもまた、凱旋門賞への参戦に名乗りを挙げました。

 

一方、アーモンドアイはドバイターフ制覇後に凱旋門賞への参戦プランを取り消し、秋の国内参戦が濃厚となっており、サートゥルナーリアもまた視野に入れていた凱旋門賞への遠征プランを白紙にしており、それらに代わる形となりますが、日本トップクラスの2頭が凱旋門賞へと参戦する意向を示したことになります。

 

まず、ダービー馬ロジャーバローズですが管理する角居調教師は現地へと赴き、前哨戦を使うか否か、使うのならばどのレースにするかなどを検討する模様です。
その場合、最有力となるのは恐らく凱旋門賞と同じロンシャン競馬場の芝2400mで行われる3歳限定のG2ニエル賞ではないかと思われます。
凱旋門賞ではまだ勝てていない日本馬ですが、このニエル賞はキズナとマカヒキが勝っていますね。
ただ、この他にもアイルランドセントレジャーやアイリッシュチャンピオンステークスなども前哨戦の候補には上がってくるかとも思います。

 

一方のフィエールマンですが、こちらは8月の札幌記念を前哨戦として使って渡仏、凱旋門賞へと挑むプランが明かされています。

札幌記念をステップに凱旋門賞へ向かうローテーションは過去にハープスターやゴールドシップが行ったものですね。
国内のレースでは時期的に前哨戦になり得るのは札幌記念くらいしかないですし、札幌競馬場は全面洋芝であり、高速馬場化を引き起こしていると言われるエクイターフを使用していない馬場だけにある意味、最も使いやすいレースだとも言えそうです。

 

個人的な見解としてはこの両馬の凱旋門賞参戦は賛成です。
ただ、正直言って勝つ可能性としては決して高くはないものと思います。
この2頭の凱旋門賞への適性云々はわかりかねるんですが、日本の馬場に適性を持っているからこそ日本のレースで実績を残している可能性は非常に高いんですが、そうした馬が凱旋門賞への適性を十分にも持っているなんてことはそうそうあることではないかと思います。

 

でも、確かに言えることは実際に出走しなければ、負けることもないですが、絶対に勝つこともないってこと。
それはロジャーバローズ自身が証明したことでもありますね。

かつて宝塚記念を制して凱旋門賞へ出走、2着と健闘を見せたナカヤマフェスタにしても下馬評としては殆どマークされていませんでしたし、国内の期待もそれほど大きなものではありませんでしたが、レースでは惜しい走りを見せています。

ロジャーバローズ、フィエールマン共にディープインパクトの産駒であり、凱旋門賞に対しての適性は低いと見ている方も少なからずあるかと思いますが、実はディープインパクト産駒はロンシャン芝2400mの重賞を2勝していますし、スタディオブマンに至ってはシャンティではありますが、フランスダービーを制していたりもします。

要は勝ち目は決して高くはないと思われるかもしれないけどやってみなきゃわからないじゃないか!ってことです。

 

凱旋門賞は招待競走ではなく、遠征費用はその多くが自費負担です。
ザックリですが輸送費用だけでも1000万円は掛かると言われています。
札幌記念を前哨戦に凱旋門賞へと参戦したハープスターの遠征時には総額で約1600万円の費用が発生したそうです。
もちろん、遠征に伴い様々な手続きや準備、対策などを行っていかなければならないのですから厩舎サイドとしても多大な負担となってきます。

サトノダイヤモンドのように遠征を機に不振に至るケースもありますし、サクラローレルやマンハッタンカフェのように故障するリスクもあります(今の日本の芝コースより欧州の芝コースの方が故障率は高い傾向があります)。

もちろん費用的な面では凱旋門賞の賞金は非常に高く、勝てば約4億円となり、上位に入れば遠征費用などは余裕でペイ出来ることにはなりますし、凱旋門賞に出走する馬は既に高額賞金を得ているので、それほど大きな問題ではないかとも思います。

 

ただ、決して少なくないリスクを負いながらも、そこに果敢に挑もうという姿勢は高く評価したいですし、応援もしていきたいと思います。

 

日本競馬には長きに渡って、「凱旋門賞こそが競馬に於ける最高峰であり、最大目標である」という信仰が少なからず存在しています。

近年の日本競馬のレベルから察するに、いつかは必ず日本馬が凱旋門賞を制する時もやってくると思っています。

そして、この「凱旋門賞信仰」は実際に日本馬が勝利を掴まないことには破られないんじゃないかと思っています。

いつの日か凱旋門賞が単なる選択肢の一つという認識がなされるようになり、新たな時代を迎えるためにも多大なリスクを背負ってでも挑む馬と人々を応援したいと思います。