2019年 東京優駿(日本ダービー)回顧
戦前より3強の戦いとの評判だった今年のダービー。このレースを制したのは単勝93.1倍の人気薄ロジャーバローズでした。
個人的な話で恐縮ですが、予想記事で3強に◎、〇、▲を打ち、△評価としてロジャーバローズとクラージュゲリエの名を挙げておいて、馬券は外してしまったのが何とも歯痒い思いでした…。
レース総括
チャカついていたサートゥルナーリアが立ち上がるような発馬で出遅れてのスタートに。メイショウテンゲン、レッドジェニアルも出遅れ気味のスタートに。
戦前の予想通りに最内のロジャーバローズが先頭を窺うところを外からリオンリオンが気合をつけて先頭を奪いに行く展開に。
1コーナーまでに気合をつけられたリオンリオンの勢いは止まることなく、後続の馬達をどんどん引き離していくことに。それを離れた2番手でロジャーバローズが追走。
ロジャーバローズから少し離れてサトノルークスが続き、さらにやや空けてエメラルファイト、ダノンキングリーが追走。
馬群は縦に大きく広がり、クラージュゲリエ、マイネルサーパス、ヴェロックス、ランフォザローゼス、シュヴァルツリーゼらがこれに続き、中団から後方寄りの位置に人気のサートゥルナーリア、ニシノデイジーが追走。
飛ばしていったリオンリオンの1000m通過タイムは57.8。
後続に1秒以上の差をつけて逃げるリオンリオンに対して各馬は殆ど無視するかのように待機。
3コーナーを向いてもリオンリオンのリードは7、8馬身程。
それを追うロジャーバローズも3番手以降に5馬身程のリードを残し、それを追う馬群からはダノンキングリーがジワッと浮上。ヴェロックスが馬場の中ほどあたりから進出し、その外にサートゥルナーリアが接近。
飛ばしに飛ばしたリオンリオンは直線、残り400mを切ったあたりで止まって脱落、代わってロジャーバローズが後続にリードを保ったまま先頭に。
ダノンキングリーは内目、そのやや後方外目からはサートゥルナーリア、ヴェロックスが前を窺う位置に浮上。
しかし、ロジャーバローズの脚色はなかなか衰えることなく、その差はなかなか大きく詰まってこない。
サートゥルナーリア、ヴェロックスは届く脚色ではなくなり、ダノンキングリー1頭がロジャーバローズとの差を徐々に詰めていく。
しかし、ゴール手前でダノンキングリーの伸びは鈍り、そのままロジャーバローズが粘り切って優勝。
最後までしぶとく脚を使ったヴェロックスがサートゥルナーリアを競り落として3着に、サートゥルナーリアは最後は失速気味になり、ニシノデイジーに辛うじて先着の4着に。
リオンリオンが序盤にハナを奪うべく気合をつけて飛ばしていったことでその勢いは容易に止まらず、ラップが12秒台に落ち着いたのは1000mを過ぎてから。
ただ、それを追うロジャーバローズは1秒程離れた位置を追走しており、直線を向くまで無理に追いかけることなく一定のペースで走り続けています。
レースそのもののラップは早かったのですが、ロジャーバローズ自身は遅くはないものの、ほぼ一定のラップを刻んでいました。
それを追う馬達は3コーナーを過ぎても手応えの残るロジャーバローズを前に3強がいずれもやや早めに前を捉えるべく動くのに合わせるように仕掛けを早めていっています。
先頭がロジャーバローズに変わってからの2ハロンのラップは11.9-12.0。
この馬が最後まで止まることなく脚を持続させていたことがわかります。
早めに動かざるを得なかった3強はなし崩しに脚を使ったこともあり、最後は止まってしまいました。
これはここ最近の東京芝コースの特徴でもあって、ある程度前が積極的に行って、上がりが多少掛かる展開になっても持久力のある馬はバッタリとは止まらなくなっています。
ノームコア然り、カレンブーケドール然りです。
ここは来週も同じような傾向が出てくるように思います。
では、ここからは各馬について触れていきます。
ロジャーバローズ
最内枠を引いたことですんなりと前に出ることが出来、リオンリオンが暴走気味に飛ばしていったことで馬群は大きく縦長になるのですが、3番手以下にも数馬身差をつけていたこの馬のペースは遅くはないまでも決して早いと言えるものではありませんでした。
結果としてスピードの出やすく、前が容易に止まらない今日の馬場で一定のペースを保てたこともあり、最後までその脚は止まることはありませんでした。
「ダービーは最も運の良い馬が勝つ」という古い格言がありますが、今年に関しては少なからずこの馬にとってはそうした枠や展開面での恩恵が多分にあったことは確かだろうと思います。
ただ、リオンリオンの玉砕的な逃げに翻弄されず、勝利を手にするに当たって絶妙なペース配分で逃げさせた浜中騎手の巧みな手綱捌きなくしてはこの勝利はなかったでしょうし、何よりロジャーバローズ自身の能力があってこその今日の走りだったかと思います。
恐らく、いつでもコンスタントに強さを発揮する馬ではないようには感じますが、決してフロックと言った勝利ではないとも思います。
ダノンキングリー
3強の中でも最もスムーズな競馬が出来たのはこの馬でしょう。
2番手を行くロジャーバローズとはやや離れていたものの、その後方の馬群の先団に位置し、馬場の良いところを上手く走らせたこともあり、最後は差し切るかとも思われる脚を披露しています。
一瞬は差し切るかに思えたところでロジャーバローズと同じ脚色になったあたり、脚を使い切ってしまった印象です。
戦前には距離適性に対する不安も少なからず囁かれていましたが、この消耗戦で最後まで食いついたことろを見る限り、一介のマイラーではないと見ていいかと思います。
展開一つでは十分に勝ち切っていただけのパフォーマンスだったと思いますね。
ヴェロックス
道中はダノンキングリーを前に、サートゥルナーリアを後方に意識しながらの競馬。
直線に向いての勝負所ではサートゥルナーリアに一旦は前に出られるものの、最後までしぶとい脚を使って、これを差し返しています。
皐月賞でもゴールまでしぶとく似たような脚を使っており、一瞬の斬れに於いてはダノンキングリー、サートゥルナーリアに及ばぬまでも脚の持続力は非常に高いものを持っているように思います。
仮にロジャーバローズと同じ位置で競馬をしていたならば勝っていたのはこの馬だったかもしれないですね。
父のジャスタウェイも似たようなところがあっただけにもう少し時計の掛かる馬場で見直してみたいですね。
勝手な意見ではありますが、海外遠征してみてもいいかとも思います。
サートゥルナーリア
パドックでレーンが跨って以降、終始チャカチャカしっぱなしのままゲートへ。
結果、体力を浪費したあげく、立ち上がるような発馬で大きく出遅れたことで、馬群の後方寄りの位置からの競馬に。経験の浅さがここで裏目に出てしまったかのような形でした。
「普通」に走っていたなら十分に勝ち負けになっただろうとは思いますが、これが現実です。
また、皐月賞でも最後にヴェロックスに迫られた時に感じてはいましたが、この馬、瞬発力は十分にあるもののそれほど長くは脚を使えない印象です。
操作性に優れたグランアレグリアみたいなイメージでしょうか。
ニシノデイジー
皐月賞で大敗したことで大きく評価を下げていたこの馬ですが、流石にナメられ過ぎといったところでしょうか。
2歳時に見せていた実力は確かなものでした。
勝浦騎手も巧みにインに入れて馬体を併せてこの馬の持ち味でもある勝負根性を引き出すようなレースに持ち込みました。
現状ではベストに近いレースではなかったかと思います。
その一方で、上を目指すのならば更なる成長なくしては通用しないだろうことも確かでしょう。