2020年 安田記念回顧
G1優勝経験馬が10頭と近年でも稀に見る程の豪華メンバーで行われた安田記念。
このレースを制したのは単勝1.3倍の圧倒的1番人気アーモンドアイではなく、昨年の桜花賞馬グランアレグリアでした。
このレースを振り返るに当たって、触れないわけにはいかないのが前日夜に府中市を襲った集中豪雨だったかと思います。
不安定な大気状態になるだろうことは予報でも出ていましたが、1時間に約50ミリと災害レベルの強烈な豪雨は予報を大きく上回るものでした。
結局数時間の降水でしたが、馬場は一気に悪化。
それでも東京競馬場の芝コースが誇る世界でも有数の排水能力もあって、朝には重馬場に。
その後の晴天もあり、午前中には稍重馬場にまで回復したものの、当然完全回復までには至らず、レースは稍重のまま行われることになります。
結果的にこの馬場がグランアレグリアに味方した、そんな印象の結果となりました。
では、レースの総括から行ってみましょう。
安田記念 総括
前述したように前日夜に凄まじい豪雨が競馬場を襲い、一時は馬場に水が浮くぐらいの不良馬場になっていたものと思われます。
降りやんだ後からは急速に回復を見せたものの、短時間に60ミリを超える降水があっただけにレースまでに完全には回復し切ることはありませんでした。
レースは人気のアーモンドアイとクルーガーが出遅れてのスタート。
アーモンドアイはすぐさまダッシュを利かせて馬群のやや後方へと取り付く形に。
先手を取ったのは大外枠から出していったダノンスマッシュ。
それにミスターメロディが続き、スプリンター2騎がそのスピードのままに馬群を率いる形となり、内からはダノンプレミアム、中からアドマイヤマーズ、セイウンコウセイが続いて行く展開に。
それらを見る形でダノンキングリーが追走し、中団にはグランアレグリア。
インディチャンプ、ペルシアンナイト、アーモンドアイが続き、ノームコア、ケイアイノーテックは後方からの競馬となり、前半の800m、ダノンスマッシュの通過タイムは45.7。
コーナー付近で馬群はその差を詰め、4コーナーから直線に向くあたりで馬群は内外に大きく広がっていく。
坂に向いたあたりでグランアレグリアが手応え十分で先頭を伺う勢いで脚を伸ばしてくる。一方、アーモンドアイとインディチャンプは外目に持ち出して追われるも先に抜け出したグランアレグリアとの差は縮んでこない。
完全に抜け出したグランアレグリアは最後まで失速することなく後続を寄せ付けないまま完勝。
アーモンドアイは何とかインディチャンプとノームコアを振り切っての2着。
ノームコアがゴール前で鋭く追い込んで、インディチャンプに並んだところでゴールも辛うじてインディチャンプが3着を死守し、ノームコアが4着に。
では200m毎のラップタイムを。
12.1-10.9-11.2-11.5(前半800m45.7)
11.6-11.4-11.0-11.9(後半800m45.9)
前走とは違い、ダノンスマッシュが積極的に逃げたことで緩みのないペースとなりました。
この馬場状態を考えれば、いくらG1とは言え、なかなか厳しいラップとなっています。結果的に前に出していった馬達は直線で止まってしまいました。
早めのペースと渋り気味の馬場で瞬発力が削がれる形となる展開だったかと思います。
では、上位各馬の寸評に行きましょう。
安田記念 上位各馬寸評
1着 グランアレグリア
結果的に展開がこの馬にハマった印象です。
やや一本調子気味なところのある同馬にとっては究極レベルの瞬発力勝負よりは今回のようなある程度平均的なラップかつスパートが効くだけのスタミナ温存も出来るような展開が向いていたと言えます。勿論、これだけの完勝だけに卓越した能力があってこそではありますが。
ですから、いつでもこの強さを見せられるタイプではないと思います。
こうしたタイプの馬は時として驚く程の強さを見せる一方で負ける時はアッサリ、ということが多くなります。
2着 アーモンドアイ
スタートの出遅れを問う声もあるようですが、結果的にはこの出遅れはそれほどマイナスには働いてはいないものと見ています。むしろなし崩しに脚を使わされるペースの方が効いていて、持ち味の爆発的な瞬発力を十分に引き出せなかったことが敗因と見ます。個人的に感じていた点としては前走があまりに鮮烈な走りだっただけに過剰人気だった印象があったことですね。やはり軽めの馬場でこそでしょう。
3着 インディチャンプ
位置取りも悪くなく、この馬の競馬は見せていると思われます。強いて言うなら早めのペースの追走に脚を使わざるを得ず、直線での瞬発力がやや削がれた印象。
それでも怪物アーモンドアイを相手に接戦に持ち込んでおり、流石と言えるだけに実力は見せているように思います。
むしろ近走では走りに安定感も出てきており、競走馬としては充実期に入っているように感じられます。
4着 ノームコア
早くなるペースを見越していたのか周りに合わせることなく後方で待機。結果的にこの馬にはちょうど良いペースでの追走となり、最後はインディチャンプとアーモンドアイに素晴らしい勢いで迫っています。これは鞍上の好騎乗だったと言えそうです。
また、多少渋った馬場も問題にしないことも好走の後押しだったかと。
2000mくらいまでは十分このレベルで勝負できると見ます。
5着 ケイアイノーテック
本来このくらいの走りが出来るだけの能力は有している馬だと見るべきかと。
近走は全力を出し切らないままレースを終えるということを繰り返していましたが、G1のここでも似たような走りを見せてきました。勿論、展開が向いたのは確かですが、それ以上にこの馬のポテンシャルは十分G1クラスと言える水準にあったと見ています。ただ、それを発揮できるかがポイントになろうかと思います。次走で人気になるようなら怪しいところです。
6着アドマイヤマーズ、7着ダノンキングリー、8着ダノンスマッシュの3頭については早いペースで止まってしまいましたが、敗れはしつつも相応の能力は見せてきているように思います。
特にダノンスマッシュはあれだけのペースで飛ばしながらも46.7で後半走破しているあたり、一介のスプリンターというより1400、1600でも十分に重賞レベルでやれる能力を秘めていることを示したように思います。