うまコラ

競馬歴28年の筆者が綴る競馬コラム

顕彰馬の在り方

先日、キタサンブラックが顕彰馬に選ばれたことがJRAより発表されました。

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昨年は僅差で選出されなかった同馬ですが、今年の投票では全体の約80%、158票の得票を得て、晴れて顕彰馬に選ばれました。

 

 

では、そもそも『顕彰馬』って何でしょうか。

 

JRAによると、

中央競馬の発展に多大な貢献のあった競走馬の功績を讃え、後世まで顕彰する」

馬ということです。

 

顕彰馬の選定方法は10年以上競馬報道に携わっているマスコミ、新聞関係者による選考投票を行い、総投票者の75%以上の得票があった場合のみ顕彰馬に選定されるというものです。

しかし、この選定方法はファンや関係者などより随分以前より問題視する声が上がっています。

2020年の投票を例に挙げてみましょう。

G1戦で7勝を挙げ、日本最高の獲得賞金を得たキタサンブラックについては全く問題はないと思われます。

196の総投票数の内、158票を得たのも妥当なところかと思われます。

しかし、たった1票の得票でしたが、ファインニードルへの投票がありました。

ファインニードルは現役当時は国内最強スプリンターとしての評価も高かった馬ではありますが、歴代の受賞馬などと比較してみると明らかに実績で劣ります。

それを言うならキングカメハメハもG1勝ちは2つだけなのに80票も入っているじゃないかという声もあることでしょうし、4票を獲得したシーザリオについても同様のことが言えそうです。

後者については優れた繁殖成績を残しているから、という理由付けも出来るかと思いますが、ファインニードルにはそれすらありません。

 

中央競馬の発展に多大な貢献があったという点に於いてファインニードルは残念ながらそこまでの活躍を見せたとは思えない、というのが殆どの方が感じられることかと思います。

実際、これまでに顕彰馬に選ばれてきた馬達というのは競馬にあまり競馬に詳しくない人でも名前くらいは知っているというのが殆どです。

ファインニードルを知っている日本人が一体どの程度いるのでしょうか。

 

何もファインニードルをディスりたいわけではありません。

この馬に投票した方は本気でファインニードルが顕彰馬として相応しい成績を残してきた馬だと思ったのでしょうか。

 

年度末表彰もそうなのですが、記者投票というシステムに問題があるように思われるのは筆者だけでしょうか。

年度末表彰に於いてもG1勝ちのない馬に投票する人が毎年現れます。

投票した記者の方はもしかしたらお世話になった厩舎の馬に票を投じたのかもしれませんし、この馬に馬券で儲けさせてもらったのかもしれません。

そうした何かしらの事情もあったのかもしれません。

 

しかし、そんなものが介在するものは求められていないのは間違いない事実です。

 

それならばファン投票の方がよっぽど共感が得られるのではないでしょうか。

もちろんファン投票に於いても組織票が入ったり、おかしな馬への投票が出てくることでしょう。

ただ、宝塚記念有馬記念のファン投票ではおかしな結果になることはこれまでありませんでした。

勿論、おかしな投票で全体の結果に影響を及ぼすことも考えられますから、ファン投票の結果をそのまま顕彰馬にするのではなく、その結果に対してJRAが審査を行った上で選定すればいいのではないかとも思います。

 

何にせよ今の方式に対して不満を持つ人が多い状況が何十年も続いているのは確かでしょう。

 

そして、もう一つ問題なのが選定基準が実に曖昧な事です。

 

先程、キングカメハメハシーザリオがG1戦で2勝と実績面に於いて十分とは言えないながら繁殖成績が優れている…と触れました。

確かにキングカメハメハ種牡馬として数々のG1馬を送り出し、孫の代まで大活躍を見せており、そうした意味に於いては多大な貢献と見ることが出来ます。

シーザリオについてもエピファネイアリオンディーズ、サートゥルナーリアがG1を制する活躍を見せており、エピファネイア種牡馬としても既にG1馬も出しており、これも素晴らしい貢献であると見ていいのかもしれません。

 

だったら、何故ここでサンデーサイレンスノーザンテーストの名が挙がらないのでしょう。

 

日本で走った馬でなければならないなんて理由でしょうか?

ならば国内G1は2勝だけのエルコンドルパサージャスタウェイに毎年多くの票が入っていたのでしょうか。

 

中央競馬の発展にに多大な貢献をしたという意味に於いては間違いなくサンデーサイレンスはナンバー1でしょう。

幾多のG1馬達を送り出し、後世にこれでもかという程の血を残しており、死後20年近くが経った今でも日本国内のG1を制する馬の大半はサンデーサイレンスの血を引いた馬達です。

 

繁殖成績を考慮に入れるのなら彼らが入らないのはどう考えてもおかしいとも言えます。

 

やはり明確な選考基準は必要だと考えます。

例えば、競走成績のみであればG1で3勝以上であるとか、繁殖成績であればリーディングサイアーに複数回輝いているであるとか3頭以上のG1馬を生んだ牝馬だとか。

その双方で活躍を見せている馬なら牡馬はG1で1勝以上かつリーディングサイアーランキング2位以上、牝馬はG1で1勝以上かつ複数のG1馬を生んでいるとか。

 

誰が見ても顕彰馬に相応しくないと思われる馬は最初からふるいに掛けてしまった方が良いと思います。

マルゼンスキー外国産馬であったために十分に活躍の機会を得られることなく8戦全勝のまま引退した時代ではありません。

余程の事がない限り、上記に挙げたような基準をクリア出来ないまま、顕彰馬となる馬はいないでしょう。

 

近年実際に選ばれている馬はその殆どがG1で5勝以上の実績を残している馬です。

実際に選出された馬達について異論を唱える気など全くありません。

むしろ、選定基準を明確にすることで「顕彰馬」の在り方と言うものをクリアにし、選ばれた馬達がより意味のある存在として後世に語り継がれるべきではないかと思います。