2019年 宝塚記念回顧
一昨年の牡馬クラシック競走の勝ち馬3頭が勢ぞろいするなどなかなかの好メンバーが集った今回の宝塚記念。
このレースを制したのは紅一点のリスグラシューでした。
宝塚記念 レース総括
スタートで大きく出遅れた馬はなく、最内枠のキセキが逃げようとするもなかなか加速が付かずに鞍上の川田騎手が激しく追い続け、他に先手を取ろうとする馬もいなかったため、何とか先頭を確保。
これに続く形でスティッフェリオ、リスグラシュー、アルアインらが追走。
行きっぷりの良くないキセキでしたが、川田騎手が懸命に促して1馬身強のリードを作って1コーナーへ。
一方、楽な手応えでリスグラシューがこれを2番手で追走。
アルアイン、スワーヴリチャード、スティッフェリオらがこれに続き、レイデオロ、クリンチャーがこれらを追う形。
エタリオウは後方よりの位置からの追走となり、マカヒキはポツンと離れ気味の最後方からのレースに。
キセキは600mを過ぎたあたりでペースを落とし、1000mの通過タイムは60秒ちょうど。
馬群は比較的詰まった形でレースは進み、3コーナーで最後方に位置取ったマカヒキがその差を詰めて追撃態勢に。
キセキは依然として1馬身程度のリードを確保したまま馬群は4コーナーへと。
直線に入ったところでキセキが懸命に逃げ切りを図ろうとするも、その外に付けたリスグラシューは余裕の手応えで並び掛ける。
キセキも抜き返そうとしぶとく脚を使うも、ジリジリとリスグラシューにその差を詰められるや、ラスト100mで力を使い果たしたように止まり、リスグラシューがキセキとの差を3馬身に広げたところでゴール。
キセキから2馬身差の3着にしぶとい脚を使ったスワーヴリチャードが入線。
さらに2馬身離されてアルアインが4着し、人気のレイデオロは5着まで。
勝ったリスグラシューのタイムは2:10.8。
200m毎のラップは、
12.6-11.4-11.5-12.4-12.1(前半1000m60.0)
11.9-12.0-11.6-11.5-11.4-12.4(後半1000m58.9)
この数字を見る限り、ややスローと言っていいペースである程度、前に付けていた馬が上位に入っています。
ただ、力を要する馬場でもあり、勝ったリスグラシュー以外の馬達は概ね36秒前後の上がりとなっており、それほど楽な流れでもなかったことが窺えます。
瞬発力を生かしたい馬、具体的にはレイデオロなどには厳しいレースとなったものと思われます。
では各馬について触れていきましょう。
リスグラシュー
事前に陣営からは状態の良さを感じさせるコメントも聞かれていた同馬、キセキが懸命に手綱をしごきながら先手を取ろうとするのと対照的にスタート直後から抜群の行きっぷりで難なく2番手につけての競馬。
かと言って、折り合いを欠いているわけでもなく終始逃げるキセキを見ながらの展開に。
4コーナーを回ってもその手応えには余裕があり、必死に追い出しを掛けるキセキに対して仕掛けるタイミングを計りながら追い出した時点で勝負あり。
ラスト1ハロンで止まる各馬を他所に最後は突き放しての楽勝となりました。
勝因としては非常に出来が良かったことと、この展開にこの馬自身の適性が向いていたことかと思います。
これまで何となく惜しい競馬で勝ちきれずにいたリスグラシューですが、裏を返せば突き抜けるだけの脚はない反面で長く脚を使えるタイプでもあり、香港ヴァーズでも好走しているようにこうしたパワーと持久力が問われる展開は向いていたものと思います。
キセキ
序盤から行きっぷりが良くなかったものの、他が積極的に行く姿勢を見せなかったことで運良く先頭でレースを引っ張ることになりました。
中盤で軽く息を入れた後は11秒台後半程度のラップを刻んで、そう離れずに追走してきた他馬の脚をなし崩しに使わせる展開へと持ち込んでいます。
ラスト100mでは止まってしまいましたが、ほぼ狙い通りのレース自体は出来ているものと思います。
ただ、すんなりとスピードに乗れなかったあたり、ジャパンカップ時のような出来ではなかったように見受けられます。
それほど良くはなかった状態ながらも川田騎手が懸命にカバーして自分のやりたいレースに持ち込めたことでここまで持ってこれた、という印象です。
スワーヴリチャード
あまり後方に置かれずに好位で競馬を進める事が出来たことで3着となった印象。
このメンバーに於いても持久力はある方になるだけに最後までバテずにいた分、他馬よりやや優位になれたように思います。
とは言え、キセキとの差は最後まで殆ど詰められておらず、昨春の好調時の出来ではなかったようです。
また、もう少し軽い馬場の方が向いているように感じますね。
アルアイン
4着とは言え、勝ち馬からは1秒以上離されてしまいました。
大阪杯を制したように状態は良かったとは思いますが、本質的にスピードタイプのこの馬には伸びた1ハロンは厳しいものとなりました。
鞍上の北村騎手はソツなく騎乗していましたが、それでも最後は止まってしまっており、このタフな馬場と展開での2200mはここまでだったかもしれません。
今と同等以上の出来ならば天皇賞(秋)あたりでもチャンスはあるように思います。
レイデオロ
昨秋の出来にはなかったこと、展開と馬場が向かなかったこと、これが敗因かと思います。
スタミナがないわけではないと思いますが、この馬の持ち味は軽い馬場で見せる瞬発力だけにスタミナを削がれ続けるような展開で、パワーをも求められるような馬場ではベストパフォーマンスは発揮出来ないということだと思います。
強いには強いが現状では「殿堂クラス」の強さではないと思えるだけに不向きな条件をいくつも乗り越えて突き抜けることは難しいでしょう。
条件が揃えば昨年の天皇賞のように強烈な走りは見せられるものと思います。
このレースの後にリスグラシューを管理する矢作調教師よりブリーダーズカップフィリー&メアターフもしくはターフ、コックスプレートへの遠征プランが語られています。
現時点ではオーナーサイド(キャロットファーム)のGOサインは出ていないようですが、既に海外へと挑戦する意向は確かなようです。
確かにこれらのレースならば国内のレースよりはこの馬に向いた馬場で走れる可能性も十分あるだけにこれらのビッグレースで勝ってしまうことも期待できるかもしれないですね。