種牡馬 ゴールドアリュール
今回取り上げるのはゴールドアリュール。
2017年2月に18歳でこの世を去ってしまっており、今年の2歳世代が最後の世代となります。
この馬について簡単に記すなら近年での日本最高のダート種牡馬、という表現となるかと思います。
日本の競馬史に於いて現役時にダートを主戦場にしていた馬でこれだけ種牡馬として活躍を見せた馬というのはいない、という意味では非常に貴重な存在であると思います。
父は日本競馬史上最高の種牡馬として歴史にその名を残すサンデーサイレンス(その父ヘイロー)、母はヌレエフ産駒のニキーヤ。
半弟に根岸ステークスを制しているゴールスキーがいる血統となっています。
サンデーサイレンス産駒ということもあり、デビューしてしばらくは芝のレースに使われていたゴールドアリュール。
それまでの6戦全てで掲示板に載る走りを見せていたものの、ダートに使われるや500万下、オープン特別と続けて楽勝。
十分な賞金を得たことでダービーへと出走するのですが、ここでもタニノギムレットに0.3秒差の5着となり、芝でも高い能力の一端を示しています。
それ以降、芝のレースに使われることはなくなるのですが、それを決定付けたのが、続くジャパンダートダービー。
余裕を持ってハナを切るや、そのまま後続に付け入る隙を見せずに7馬身差の大楽勝。
ダートでの桁違いの強さを見せつけ、続くダービーグランプリ(当時は交流G1)でも後の東京大賞典勝ち馬のスターキングマンを相手に10馬身差と有無を言わさぬ異次元の強さを見せつけます。
同世代で3歳にしてJBCクラシックを楽勝したアドマイヤドンとの初対決となり、話題を集めたジャパンカップダートではそれまでの圧倒的なスピードは見られずに5着。
古馬の壁に跳ね返された形にはなるのですが、次走の東京大賞典ではあっさり優勝して古馬勢への雪辱を果たすことに。
アドマイヤドンとの再戦となったフェブラリーステークスではビワシンセイキとの一騎打ちを制して優勝、G1での勝利を早くも4へと伸ばすことになります。
この勝利で、次なる狙いをドバイワールドカップへと向けるのですが、不幸なことに湾岸情勢が悪化したことでドバイへ向かう航空機が飛ばなくなってしまいます。
陣営も最後まで何とかドバイへと輸送しようとしたようなのですが、願いは叶わずに遠征の夢は途絶えます。
遠征を断念したゴールドアリュールはアンタレスステークスに出走、ここで前年にジャパンカップダートで敗れたイーグルカフェを相手に8馬身差の楽勝と鬱憤を晴らすかのような走りで楽勝。
しかし、結果的にこれが最後の勝利となります。
次走、帝王賞で大敗後に喘鳴症が判明して引退、種牡馬として歩むことになります。
ダートでの活躍馬は得てして種牡馬としては不人気になることが多く、なかなか活躍することはないのですが、ゴールドアリュールに関しては父がサンデーサイレンスということ、芝でも一定の能力を示していたこともあり、まずまずの人気を得ての種牡馬生活のスタートとなります。
その後、産駒達がデビューを迎えるやダート戦線で次々に活躍馬が登場。
初年度からダートG1を9勝したエスポワールシチー、同じくG1を6勝したスマートファルコン、南部杯を制したオーロマイスターを出し、輝かしい種牡馬デビューとなります。
その後もコパノリッキーやゴールドドリーム、クリソライトなどダート戦線で数多くの活躍馬を出し続け、今や日本最強のダート種牡馬として君臨するに至りました。
では、そんなゴールドアリュールの産駒達の特徴について触れていきましょう。
産駒デビューから2019年5月5日までのデータとなります。
ゴールドアリュール産駒ー距離適性・芝
自身は芝でもダービーで5着しているようにある程度の適性も見せていたゴールドアリュールですが、産駒達の成績を見てみると流石にダートでの成績には及ばないまで全くダメではないこともわかります。
1600m以上の距離ならば相応の数字を残しており、芝だからといって無闇に消せるようなものでもなさそうです。
回収率についてはやや低めとなっています。
では、主戦場のダートも見ていきましょう。
ゴールドアリュール産駒ー距離適性・ダート
流石にダートとなるとなかなかの成績となっています…が、実は複勝率自体はそれほど際立つレベルでもないことも窺える数字となっています。
距離的にはマイルを超えての成績が優れており、牡馬に至っては1600~2000mの距離に於いての単勝回収率は100を超えており、この条件でただ単勝を買うだけで儲かってしまう成績となっています。
代表産駒のエスポワールシチー、スマートファルコン、ゴールドドリーム、コパノリッキーらはいずれもこうした距離で強さを示していますが、数字にもそうした裏付けが出てきています。
芝もそうですが、結構スタミナは持っていると思って良いかと思いますね。
では、続いて馬場が重くなった時はどうなのか見てみましょう。
ゴールドアリュール産駒ー馬場状態別成績・芝
サンプルとなるレース数は多くはないのですが見ての通り、明らかにやや重馬場、重馬場の時の成績が向上していることが見て取れます。
スピードが出る馬場よりは多少時計が掛かる馬場の方が向くようで、この表ではわかりませんが、時期的に馬場の状態が良くなりやすい夏場には成績を落としてしまう傾向も出ています。
芝に出てくることはそう多くはありませんが、このことは心に留めておいてもいいかと思います。
ではダートではどうでしょうか。
ゴールドアリュール産駒ー馬場状態別成績・ダート
ダートに関しては良馬場、やや重馬場の成績が良好。
一方、大きく悪化した馬場ではそのパフォーマンスを落としてしまっていますね。
尚、芝とは違ってダートでは時期的なパフォーマンスの差はあまり見られませんね。
では得意なコースを見ていきましょう。
ゴールドアリュール産駒ー得意コース
ここでは出走回数100回以上のフィルタリングでデータを出しているのですが、ものの見事にダートコースが上位を占めています。
この表の枠外にもひたすらダートコースが並び19位までもがダートとなっています。
この表の枠外も含めて感じられるのはダートに関しては極端な得意、不得意が見られないこと。
上位の複勝率30%程度というのは飛び抜けた高率ではない反面で、比較的複勝率の低いコースでも20%を超える数字を残しており、ダートに関しては少なくとも中距離ならばほぼコースを問わない活躍が見られています。
日本全国の地方競馬で勝ちまくっていたスマートファルコンの強さが頷けるようなデータですね。
最後に相性の良い母の父はどうでしょう。
ゴールドアリュール産駒ー母の父別成績
ここでは出走回数80回以上と言うフィルタリングを行い、30頭が該当しています。
この表だけでなく全体的に見ていった時に目につくのはノーザンダンサー系の種牡馬、特にダートで実績を残していたようなパワータイプの種牡馬の名前が比較的多くなっており、この表にあるディキシーランドバンド、マルゼンスキー、フレンチデピュティの他にクロフネ、ストームキャット、アジュディケーティングが好成績を残していますね。
ダンシングブレーヴも好成績なのですが、その産駒ホワイトマズルはさっぱりダメなのは面白いところでしょうか。
既にこの世を去ってしまっているゴールドアリュール。残されている産駒達は次第に減っていくことになりますが、ダート界に於いてはまだナンバー1の座は揺るがなそうですね。
ダートで滅法強い種牡馬だけに地方競馬に所属している産駒も決して少なくはないですし、その存在感はまだ数年は残りそうですが、その数年後にこの立場を引き継ぐことになる馬が出てくるのか。
この馬の産駒、エスポワールシチー、スマートファルコンは既に種牡馬として産駒をデビューさせており、これにコパノリッキー、ゴールドドリームが続いて行くことになりそうですが、彼らがそうした存在になり替わるようならば夢があるところですね。