うまコラ

競馬歴28年の筆者が綴る競馬コラム

2019年 NHKマイルカップ回顧

「令和」最初のG1となったNHKマイルカップ、この1戦を制したのは2番人気のアドマイヤマーズでした。

その一方で断然人気に推されていた桜花賞馬グランアレグリアは直線でダノンチェイサーの妨害をしたことで5着へと降着となり、鞍上のルメール騎手は16日間の騎乗停止処分となり、オークスやダービーに騎乗出来なくなるなど明暗が分かれる結果となりました。

 

では、このレースについて振り返ってみましょう。

 

前日午後に強烈な雹が降るなどしてレースの開催が途中で中止される程の悪天候に見舞われた東京競馬場でしたが、当日の天候は良好で心配されていた馬場の状態は順調に回復、結果的に良馬場で行われました。

スタートでは大きく出遅れる馬はなく、逃げると予想されていたイベリスに加え、プールヴィル、クリノガウディーの3頭が先手を取るべくダッシュを利かせて先頭争いに。

外枠を引いていたアドマイヤマーズはそれほど良いスタートでもなかったことで馬群の中ほどを外からの追走。人気のグランアレグリアは先手争いを繰り広げる3頭を追う形で4,5番手での追走に。

前がややバラけ、中団以降に多くの馬が脚を溜める態勢でやや詰まった馬群を形成。

前に行った3頭は固まった状態のまま、向こう正面を通過し、序盤の3ハロンを33.9とやや早いペースのまま3コーナーへと馬群を先導。

グランアレグリアは早めのペースながらやや行きたがるのをルメールがなだめながらの追走、アドマイヤマーズは徐々に位置取りを上げて7番手あたりに進出し、ダノンチェイサーと共にグランアレグリアの直後に位置。

馬群は直線に向くも先行集団が密集、進路を失ったダノンアレグリアは何とか早めに勝負に出ようと強引に外に持ち出し、ダノンチェイサーと接触。

先行集団が一団となったままレースはラスト1ハロン、その馬群の間を割るようにカテドラルが脚を伸ばし、ゴチャつく位置を避けるように外からはアドマイヤマーズがジリジリ脚を伸ばしてこれに接近。

この2頭が抜け出しかけたかというタイミングで更に外から豪快に追い込んできたのが人気薄のケイデンスコール。

結果、カテドラルを交わし、外からのケイデンスコールの追撃も抑えたアドマイヤマーズが半馬身のリードでゴール。

ハナ差となった2着争いは外のケイデンスコールに。

カテドラルは僅かに粘り切れず3着。

グランアレグリアは少し離れた4番手で入線も、ダノンチェイサーへの走行妨害が認められ、5着に降着。

何とか態勢を持ち直してきたダノンチェイサーは5番手での入線から4着に繰り上がりとなる結果に。

 

アドマイヤマーズ

ある程度、前での競馬をしたかったこの馬が大外の17番枠からの発走と言うことでどういった走りを見せるかが1つの焦点でもありましたが、スタートで飛び出せなかった序盤は焦らずに外から徐々にポジションをジワジワ上げながらの追走。

前が競り合い、ペースが上がったこともあり、無理に深追いせずにいつもよりはやや後ろからの追走となります。

結果的にこれが効く形になるのですが、無理に馬群に馬を入れることなくやりあう先行集団を追う「後方集団の先頭付近」に位置したことで直線でゴチャついた内から中程の位置を上手く避け、外目からきっちり自分の脚を使う競馬に持ち込みました。

一部で最近の成績不振に対して辛辣な意見も聞かれていた鞍上のデムーロでしたが、そこは腐ってもデムーロ、ということでしょうか。実に見事なエスコートだったかと思います。

アドマイヤマーズの上がり3ハロンは33.9。終わってみればいつも通りの脚を使っており、巧みにアドマイヤマーズの競馬に持ち込んでの勝利となりました。

十分に強さは示したアドマイヤマーズでしたが、古馬戦線のトップクラスで戦うにはもう一段階のレベルアップが必要かとも思います。

 

ケイデンスコール

大外枠だったこともあり、道中はじっくりと後方で待機。

人気もなかったことで腹を括ってこの馬の競馬に徹しての追走。結果的にそれがハマった印象です。

前走の毎日杯でも良い脚は使っており、復活を匂わせる走りは見せていました。

加えて直線、馬場の中ほどがゴチャついたこともあり、大外に持ち出しての追い上げで他馬よりもスムーズに走れたことが好走に繋がったように感じます。

新潟2歳ステークスで見せた鬼脚は本物だったのでしょう。

 

カテドラル

大敗が続きましたが、前走のアーリントンカップでは出遅れたこともあり、後方から強烈な末脚を繰り出してあわやと言うところまで迫っての2着。

野路菊ステークスでヴェロックスを封じた実力が蘇ったようですね。

この馬もやや後方からの競馬でじっくりと進めたのですが、前が引っ張ったことでペースが程よく早くなったことでこの馬におあえつらえの流れになりました。

直線、前が壁になるシーンもありましたが、馬群を割って抜け出すことが出来ました。

展開もありますが、このくらいの力量はある馬だったということかと思いますね。

 

グランアレグリア

改めてこの馬の脆さが表面化していしまった、そんな印象のレースでした。

ペースは速いにも関わらず、行きたがってしまいながらの追走。

桜花賞のようなレースに持ち込みたい同馬にとっては早めに仕掛けて押し切りたいところでゴチャつき、何とかしようと強引に外に持ち出したら思いのほか強くダノンチェイサーにぶつかってしまった、という悪循環。

この時点で勝負ありでしたね。

非常に高い潜在能力を有していながらも精神的な脆さ、脚質的に融通が利きにくいという部分を少なからず持っている馬だけに常に安定して高いパフォーマンスを示すことが難しいことがはっきりとしました。

 

ダノンチェイサー

早めのペースの位置取りとしてはやや前目に位置。

ただ、直線でここから加速したい勝負所で、グランアレグリアにぶつかられ体勢を崩してしまいました。

何とか立て直して、最後はしぶとく脚を使いましたが及ばず。

トラブルが何より痛い結果となりますが、仮にそれがなかったとしても勝てなかったように感じます。

また、馬自身もまだまだ未完成、といった印象も受けました。

今後の心身の更なる成長なくしては古馬トップクラスでは厳しいかもしれません。

 

 

近年のNHKマイルカップの中ではなかなか早い流れとなり、1000m通過時点でのタイムは57.8。

ほぼ古馬G1と同等のペースでもあり、3歳馬にはなかなか厳しいペースとなりました。

その厳しい流れの中で他馬に惑わされることなく自分の競馬が出来たことが何より上位の好走に繋がった、そんな印象のNHKマイルカップでしたね。