うまコラ

競馬歴28年の筆者が綴る競馬コラム

ダート戦線に思う

今週の東京メインは3歳限定のダートマイル戦のG3、ユニコーンステークス。

例年、このレースで上位に入線した馬の多くが後にダート戦線を代表するような活躍を見せることも少なくないレースとなっています。

レースのレベル的には既にG2にすべきところには十分に達しているように思います。

 

しかし、中央競馬に於ける3歳限定のダート重賞はこのユニコーンステークスと夏季に行われているレパードステークスの2レースだけとなっています。

また、2歳戦に至っては中央競馬のダート重賞は1つもありません。

 

そもそも、こうしたダート路線の番組編成は現状の形でいいのでしょうか?

 

日本の競馬は規範としたのがイギリスを代表する芝競馬であり、そのため長らくダート路線は軽視されてきた歴史があります。

かつてはダートの重賞自体が殆ど組まれておらず、ダートで勝ち上がってきた馬の多くは厳しい斤量を背負ってオープン特別に出走したり、芝に出走したりしていたものでした。

 

それが大きく変わってきたのが90年代。

フェブラリーステークスがG1へと昇格し、日本初のダートG1が誕生。

晩秋にはジャパンカップダート(現在のチャンピオンズカップの前身)が創設され、海外からの参戦を促すようになります。

それらと時を同じくしてダート重賞も次々に新設、昇格されており、その頃に今ある中央競馬のダート重賞路線は概ね出来上がったと言っていいかと思います。

 

また、かつては隔絶されていた中央競馬と地方競馬ですが、交流競走が多数出来て、各地方競馬の最高峰のレースの多くに中央競馬の所属馬が出走出来るようになりました。

 

スケジュールや施行条件などの変遷などはありましたが、90年代終盤にはほぼ現状と変わらない状況へと整い、そこから数々の名馬も登場しています。

 

ただ、個人的な考えにはなりますが、こうした現状のダート路線に関しても未完成感を感じてしまいます。

 

まず前述していますが、2歳~3歳限定レースが不十分であること。

2歳時にダートに適性を持つ馬が出走出来る中央重賞はゼロ。

川崎競馬で行われている全日本2歳優駿が唯一のビッグタイトルになっています。

少なくとも1つくらいはJRA重賞があるべきかと思います。

 

そして3歳戦。

ユニコーンステークスまでJRA重賞は1つもなく、UAEダービーへと挑もうという馬がオープン特別や500万下条件(現1勝クラス)をステップにしなければならないという状況は明らかに異様な状況かと思われます。

アメリカ遠征を行ったラニやマスターフェンサーにしても然りで、これらの馬にしても国内に目指すべきレースがあったならば、彼らは遠征に踏み切ることはなかったのではないかと思います。

実際、芝で活躍する馬達はこの時期に海外遠征を行うことはほぼないにも関わらず、ダートで走る馬達が早い時期に海外遠征を行うケースが少なくないことの意味もそこにあるでしょう。

少なくとも3歳春までに1つくらいはそうした重賞競走はあって然るべきと思いますし、クラシックシーズンにはせめてG2クラスのレースはあるべきだと感じています。

 

また、古馬戦線についても課題はあるように思います。

具体的には距離のバリエーションが少ないと思います。

1200mのダート重賞はカペラステークスしかありませんし、1400mにしても根岸ステークスとプロキオンステークスのみとなっています。

その一方で1600~1800mはフェブラリーステークス、チャンピオンズカップの両G1を含めて数多くのレースが組まれています。

そして2000m以上に関してはシリウスステークスのみです。

あまりにも1600~1800mに偏っています。

地方交流重賞では短距離や2000mを超える距離の重賞競走は組まれてはいるものの、それについても中距離に偏ってしまっていると言っていいかと思います。

 

これはアメリカでも似たような傾向が見られるのですが、アメリカではJRAのような一大組織があるのではなく、各開催競馬場が各々で番組を編成している(競馬場間での調整はないわけではないのですが)ため、各々の競馬場の最高峰のレースとなると似たような距離で行われることが多くなってしまっています。

日本の地方競馬にも似たような状況があり、その結果としてビッグレースの大半が中距離に偏ってしまっています。

いわゆるG1(JPN1を含めて)は現在、全日本2歳優駿、ジャパンダートダービー、川崎記念、かしわ記念、帝王賞、マイルチャンピオンシップ南部杯、JBCクラシック、JBCスプリント、JBCレディスクラシック、東京大賞典とこれだけありますが、1600~2000m以外で行われているのはJBCスプリントただ一つというのが実状です。

そのため、この路線で強い馬が現れると「無双状態」になりやすくなってしまっている一方でスプリンターやステイヤーにはチャンスすらなかなか与えられないのが現実です。

 

芝では随分と前から距離体系の整備を行い、スプリンター、マイラー、ステイヤーにも目指すべき舞台が用意されているにも関わらず、ダート路線は中距離で走れなきゃスターホースにはなれないんです。

 

JRA側がそうしたバリエーションを整えてもいいですし、地方競馬にそうした舞台の幅を持たせてもいい、もしくは双方が上手く連動するように協議して番組を整えてもいいと思いますが、ダート路線でも2歳、3歳のチャンピオン決定戦的レースを用意し、古馬については距離のバリエーションを幅広く持たせていく必要性があるように感じます。

JRAに関しては牝馬限定のダート重賞もないですし、これもあっていいと思います。

 

JRAがダート重賞路線の整備を行って、既に20年。

とっくに次の段階に入るべき時期だと思っているのは私だけでしょうか。