うまコラ

競馬歴28年の筆者が綴る競馬コラム

ディープインパクト 逝去

既に各種報道がなされているようにディープインパクトが30日朝、亡くなりました。

 

かねてより首の状態が良くなく、2月から始めた今年の種付けを僅か20頭程で休止し、3月以降は回復へ向けて治療が続けられていたディープインパクト。

先日、キングカメハメハの種牡馬引退が報じられた時にはノーザンファームの吉田代表より来年から種付けを再開出来るように治療を行っていく旨のコメントも出ていました。

 

28日に首の手術を行い、手術は成功して、容体も落ち着いているとのことだったのですが、29日に立ち上がることが出来なくなり、急遽レントゲンを撮ったところ、頚椎の骨折が判明しました。

状態は良くなく、回復の見込みはないとの診断が下されたことから安楽死の処置が取られ、ディープインパクトはその生涯の幕を閉じたとのことです。

 

 

 

もう何て言うかね、言葉が出てこないというか…。

 

首の状態が楽観視出来るものではないことはこれまでの報道などからも窺えるものでしたが、こんなにあっさり死んでしまうなんて思ってもみませんでした…。

 

これまで競馬の世界を20年以上見てきているだけに、競走馬は突然死んでしまったりすることはそう珍しいものではないことは承知していますから、突然のトラブルは当然起こりうるものだと思ってはいるのですが、その対象がディープインパクトともなると流石に冷静にはなれませんでしたね。

 

 

競走馬として14戦12勝、G1戦で7勝。

3歳時に無敗でクラシック三冠を制し、4歳時には天皇賞(春)、宝塚記念、ジャパンカップ、有馬記念を全て楽勝。

その強さは国外でも知られ、海外の関係者の中にはディープインパクトこそ世界最強だとの認識を持つ人も見られました。

 

種牡馬入りしてからも規格外の能力を見せ、2012年から2018年まで7年連続でリーディングサイアーに輝き、数多の活躍馬を送り出してきました。

ダービーを制した産駒だけでもディープブリランテ、キズナ、マカヒキ、ワグネリアン、ロジャーバローズ、スタディオブマンと6頭を数えます。

国外のレースに於いても活躍馬は少なくなく、ジョージライダーステークスを制したリアルインパクト、ドバイシーマクラシックを制したジェンティルドンナ、英1000ギニーを制したビューティパーラー、香港カップやイスパーン賞を制したエイシンヒカリ、トゥーラックハンデやエミレーツステークスを制したトーセンスターダム、ドバイターフを制したリアルスティール、同じくドバイターフを制したヴィブロス、英2000ギニーなどを制したサクソンウォリアー、前述のスタディオブマンは仏ダービーを制しました。

 

競走馬として残した伝説的なまでの成績、強さだけでなく、種牡馬としても内国産馬としては日本競馬史上最高の成績を残すという「これぞ名馬」と言わんばかりの圧倒的な存在感を示していました。

 

今ではその産駒達が繁殖へと上がり、孫世代が徐々に増えてきています。

ディープブリランテはセダブリランテスなどを出し、トーセンホマレボシはミッキースワローを出しています。

また、今年が新種牡馬デビューとなったリアルインパクトは次々に勝ち上がる産駒を出して注目を集め、キズナは早くも函館2歳ステークスをビアンフェが制して重賞制覇を成し遂げています。

また、母の父として菊花賞を制したキセキを出しており、今後は孫世代の更なる活躍が見られるのはほぼ確実と見られています。

 

 

 

ただ、せめてもう少し種牡馬として活躍し続けて欲しかった…!

それが叶わないのならば、せめてもう数年は生き続けて欲しかった…!

 

サラブレッドにとって17歳というのは決してもう若くはない年齢ではあるのですが、それでも命を落とすには早い、早過ぎる…。

お母さんのウインドインハーヘアはまだ存命で元気にしているんですよ…。

 

 

勿論、社台スタリオンステーションのスタッフは全力を尽くしてディープインパクトの回復に向けて最大限の努力はされたと思います。

種牡馬としては1度の種付けで4000万円を稼ぎ出す馬です。

普通のサラリーマンが10年間程掛けて様々な大変な思い、苦労を重ねてようやく稼ぎ出すのが4000万円です。

100回の種付けが出来れば40億円もの価値が生み出される、そんな化け物のような馬ですから是が非でも何とか回復させたかったでしょう。

いや、そんな金銭的な価値だけでなく、ある意味近年の日本競馬の象徴でもあるこの唯一無二の偉大な存在をこの世から亡くすことなど許されるものではありません。

 

 

そんなことはスタッフ皆が当然理解していたことでしょう。

 

しかし、そんなディープインパクトに対して回復の見込みがないと告げざるを得なかった獣医、そう告げられた者達の気持ちはどんなだったでしょう…。

 

まだ痛みに苦しみながらも生きているディープインパクトの生涯を終えさせるべく薬物を投与しなければならない者の気持ちはいかばかりか…。

 

死んでいくディープインパクトをただ、見守ることしか出来なかった者達の気持ち…。

 

 

息絶え、横たわる亡骸を前にした人々の気持ち…。

 

 

 

 

残念ですが、これは現実です。

 

 

 

 

 

過去は戻ってはきません。

 

 

 

 

 

 

 

前を向いて進んでいくしかありません。