2019年 朝日杯フューチュリティステークス回顧
今年の朝日杯フューチュリティステークス、先頭でゴールを駆け抜けたのは1番人気に推され、ムーア騎手を背にしたサリオスでした。
では、このレースを振り返ってみることにしましょう。
朝日杯フューチュリティステークス総括
スタート前、まだ2歳の各馬でしたが、激しくイレ込むような馬は見当たりませんでしたが、ペールエールがゲート入りを嫌がる素振り。
それでもゲート入りが進み、枠内でガタガタ暴れる馬もなく、スタート。
レッドベルジュールが出遅れる中で、内のビアンフェがダッシュを利かせて一気に先頭に立つや後続を2、3馬身引き離して逃げる展開に。
人気のサリオスは4番手付近での追走で、それをペールエールが追走し、人気の一角であるタイセイビジョンは後方、12番手付近での追走。
出遅れたレッドベルジュールはやや位置を上げて、タイセイビジョンとほぼ同じ位置での追走となり、更に後方にタガノビューティー、グランレイが続いて行く展開に。
果敢に先頭をひた走るビアンフェの600m通過タイムは33.8。
逃げ続けるビアンフェは後続に2、3馬身のリードを保ったままコーナーへと進出。
後方勢がその差を詰め、馬群が詰まりながらもビアンフェが依然として先頭のまま直線へ。
直線に向いてまだリードを残すビアンフェに好位を追走していたサリオスが着実に脚を伸ばしてその差を詰め、200m程を残して先頭に。
先行勢はこのあたりでサリオスを除いて次々に脱落、代わって後方に位置していたタイセイビジョンが馬場の中ほどから、外に持ち出したタガノビューティーが脚を伸ばしてくる。
しかし、サリオスの脚色は衰えることなくその差は大きく縮まることなくそのまま2馬身半のリードで1着でゴール。
タイセイビジョンが2着となり、タガノビューティーは最後に脚が止まってしまい、大外から強襲してきたグランレイが代わって3着。
レースのラップタイムは、
12.2-1.05-11.1-11.6-11.8-11.8-11.6-12.4
勝ちタイムは1:33.0で昨年の朝日杯でマークされたアドマイヤマーズのレコードを0.3秒更新しています。
このレースのレースレベルを推測するのに非常にわかりやすいのが、1レース前の3勝クラスの元町ステークス。
奇しくも勝ち時計は全く同じ1:33.0となっています。
ただ、元町ステークスは前半の800mが46.6というほぼ平均ペースだったのに対して朝日杯は45.4と1秒以上上回る早いペースとなっています。
レースそのものの水準は古馬3勝クラスよりやや下回るものと考えられます。
昔からこの時期に古馬1000万下(現2勝クラス)と同等の時計ならば重賞でも勝負になるという目安が語られていましたが、その水準は上回っており、概ねレースの水準は並程度のものだったように感じられます。
言い換えれば2着以下の馬達は現時点での力量としては古馬2勝クラス、もしくはそれ以下であるように思われます。
一方、勝ったサリオスは厳しいペースで先行していながらも後続に完勝しており、1頭別格の強さを示したものと思われます。
では、各馬について触れていきましょう。
1着 サリオス
ビアンフェがスプリント戦並のハイペースで飛ばしており、4番手で追走したこの馬にも厳しいペースとなっています。それでいながら直線では早々と抜け出しての完勝劇。
このメンバーに於いては力が1クラス以上抜けていたように感じられます。
ラスト1ハロンは12.4と掛かってしまっているのですが、各馬ともその時点で脚が上がってしまっており、その差は大きく縮まることはありませんでした。
前述した古馬との比較ならば既に古馬3勝クラスの馬達を相手に互角に戦える程度の実力を示したと思われます。
マイルまでの馬とも思えず、クラシック戦線でも十分に期待できる存在であると言って良いかと思います。
2着 タイセイビジョン
これまで通り後方からの競馬。前が厳しい展開になり、この馬にはうってつけの位置取りに。コーナーリングでも慌ててそとに持ち出すことなく、最小限のロスで直線に向いており、敗れたとはいえ現時点でのこの馬の能力は概ね出し切ったものと思われます。
裏を返すとこのレース振りで完敗したように勝ち馬との実力差は決定的なものとも言えるでしょう。
大きく成長を見せなければNHKマイルカップあたりでも勝ち負けに持ち込むことは決して容易ではないものと見ます。
3着 グランレイ
道中は前から大きく離れた後方2番手での追走。池添騎手らしい腹を割った思い切りの良い騎乗で、後方でしっかり脚を溜めて直線で大外から強襲してきました。
ラスト1ハロンでも脚が止まらなかったこの馬、恐らくラップ的にはこの馬がもっともバランスの良いペースで走っていたように思われます。
それだけに今後重賞戦線で容易に勝ち負け出来る程の力量ではないようには思いますが、少なくとも1勝クラスに於いては実力は上位でしょう。
4着 タガノビューティー
この馬も後方からの競馬となったことで展開の利を受けることになりました。
ただ、グランレイとの比較でこの馬はやや早い地点からスパートを開始しており、コーナーでは大外をぶん回しており、結果的にはラスト100mで脚が上がっており、仕掛けがやや早かったものと思われます。
ロスはあったものの展開自体はこの馬に向いていたのも事実で、現時点に於いて芝の重賞で勝ち負けするには若干足りない印象もあります。
勿論、ダートではそれを上回るパフォーマンスを見せる可能性は高いでしょう。
5着 プリンスリターン
道中はタイセイビジョンと似たような位置取りで展開が向いたのは確かでしょう。
直線ではしぶとく脚を使っては来ていますが、着差は決して小さいものではありませんでした。
この3年間で僅か8勝の原田騎手も大舞台ながらソツなく騎乗し、現時点での力量は発揮しているものの、重賞戦線で勝ち負けするにはまだ足りない印象です。
レッドベルジュールは出遅れたことで後手後手に回り、追走に脚を使わされる形となり、勝負にはなりませんでしたね。
ペールエールもゲート入りを嫌がり尻っぱねをして、スタート後の手応えもあまり良くなかったあたり馬自身に走る気が起らなかったのかもしれませんね。
他馬を圧倒したサリオスはクラシック有力候補の1頭で別格として、他の馬についてはタイセイビジョンのみが重賞勝ち負け級の能力を示していて、それ以外は今後の成長なくしてはG3クラスでも容易に勝ち負けすることは難しいように思います。
個人的には今回、タガノビューティーを狙っていましてサリオス、タイセイビジョンとのワイドを買っていたので、ラストでグランレイの強襲に屈した瞬間には思わず声が漏れてしまいました…。