うまコラ

競馬歴28年の筆者が綴る競馬コラム

無敗のクラシック三冠馬コントレイル誕生

2020年10月25日、京都競馬場菊花賞が開催。

このレースを制したのはコントレイルでした。

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これでコントレイルは7戦7勝。

皐月賞、ダービーを制し、遂に菊花賞をも制覇。

シンボリルドルフ、父のディープインパクトに続き無敗でのクラシック三冠制覇となりました。

2歳時にホープフルステークスを制しているという意味では実績面に於いては現時点で父をも超えることとなりました。

 

通常ならG1レース直後にはそのレースの回顧記事を掲載するのですが、今回は歴史に残る偉業を成し遂げたコントレイルに焦点を当ててレースを振り返ることにします。

 

コントレイル、三冠への軌跡

ホープフルステークス皐月賞、ダービーと他馬に付け入る隙を見せずに勝ち続けてきたコントレイル。陣営は距離への不安があることを承知の上で菊花賞へ向かい、クラシック三冠に挑む選択を取ります。

秋緒戦に選ばれたのは中京競馬場芝2200mで行われる神戸新聞杯

道中、中団に付けたコントレイルはコーナーでややもたつくも直線に向くや一瞬で馬群から抜け出して、後方から追い込んできたヴェルトライゼンデの追撃も難なく抑えて2馬身差で完勝し、改めて力の違いを示すこととなります。

そこから中3週。クラシック最終戦菊花賞

同馬にとっては乗り越えなければならない最大の難関でもある3000mの超長距離戦。

この馬のデビュー戦で手綱を取った福永騎手は距離は1800mがギリギリではないかとの見解を示していました。

矢作調教師も概ね同じような印象を持っていたようで、この時点ではダービーすらまだ視界には十分に入っていなかったようです。

血統的にも父のディープインパクトは3200mの天皇賞を制してはいますが、本質的には決してステイヤーではなく2000~2400mを得意としたミドルディスタンスホース。産駒達にもそうした傾向は受け継がれています。

アンブライドルズソング産駒の母は代々北米のスピード系種牡馬が重ねられた血統を持ち、現役時は短距離ばかり7戦。姉のアナスタシオは主に短距離戦線で使われ、兄のバーンフライも主にマイル以下の距離で使われていたように母系は比較的短い距離に適性を示しています。

客観的に見てもコントレイルが長距離への適性を持っている可能性はかなり低いものと思われる状況。それだけに3000mという距離に対しての不安は決して楽観視出来るものではありませんでした。

そんな不安を抱えながらのゲートイン。にも関わらず、単勝オッズは1.1倍と父ディープインパクトに迫る人気振り。その数字は言ってみればそのまま福永騎手を始めとした陣営への重圧の重さとも言えるのかもしれません。

ゲートが開き、コントレイルは無難にスタート。内目の好枠を生かしてスッと先行グループに加わっての序盤。前では猛然とハナを奪ったキメラヴェリテが後続をやや引き離して先導、バビットが少し離れての追走となり、コントレイルはやや位置を下げて7番手付近での追走でホームストレッチへ。

ディープインパクトはこのあたりで馬が勝負所と勘違いしてスパートしてしまいましたが、コントレイルは時折行きたがる素振りを見せながらも福永騎手は何とかなだめながら抑える姿勢。それをすぐ外にピッタリとマークする形でルメール騎乗のアリストテレスが並走する形。

逃げるキメラヴェリテのペースは一定しない一方で、後続の馬達はこれを半ば無視しているように向こう正面での追走劇。

コントレイルは折り合いをつけるべく最内での追走。向こう正面に向いても行きたがる素振りは変わらずお世辞にも折り合いがついているとは言い難い状況。それに外から蓋をするようにピッタリとマークし続けるルメールアリストテレス

密着マークは3コーナーを回っても続いて行く中でコントレイルとアリストテレスがスパートを開始、最終コーナーを迎えて両馬は外に持ち出して4番手付近にまで進出。

直線に入って各馬とも荒れた内側を避け、外に大きく広がる中で早くもコントレイルが先頭を窺う態勢に。

そして終始マークしていたルメールアリストテレスがここで外から一気に勝負を掛けてコントレイルに並び掛け、ここからはこの2頭のマッチレースの様相に。

流石にこの距離と重たい馬場の影響なのかいつものような斬れが見られないコントレイルとこれに並び掛けながらもなかなか差し切れないアリストテレス

最後までコントレイルは僅かなリードを守り抜き、会心のレース運びを見せてきたアリストテレスの追撃をクビ差振り切って1着でゴール。

この瞬間、同馬は無敗のままクラシック三冠を完全制覇。

世界でも例を見ない、無敗でのクラシック三冠を親子で成し遂げたのでした。

 

コントレイルへの評価

春シーズンの時点で個人的にこの馬に対してはドゥラメンテと同等か若干上くらいの実力を有しているのではないかとの見解を持っていて、父ディープインパクトオルフェーヴルにはやや及ばないくらいの能力ではないかと見ていました。

この菊花賞を経て、その評価は正直に言ってほぼ平行線といったところです。

ただ、どう考えても適しているとは思えない3000mの超長距離を各馬が内を避けて走るほど痛み、力を要する馬場状態を考えればやはり並大抵の能力ではなかったな、という印象です。

ベストは2000mくらい。

東京ならば2400mは十分問題なく走ってくると見ますが、本質的には2400mでも長いとの見解はほぼ変わりありません。

舞台がパリロンシャンやアスコットの2400mならば厳しいと言わざるを得ないかと思います。

多少、重い馬場でもこなせるもののある程度早い時計が出るような馬場の方が適しているでしょう。

イメージとしてはディープインパクト少しだけスケールダウンさせてをやや短距離寄りにシフトさせたくらいでしょうか。

ただ、操作性は前述したディープインパクトオルフェーヴルを上回っているように感じられます。

これがあったからこそコントレイルは無敗のままG1で4勝を挙げることが出来たのだと見ています。